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立ち呑み日記・トマトを買いに [買い物]

朝も早き6時50分。

パリは夏の気配未だ残るこの季節でもまだ薄暗く、森閑とした舗道を、近くの広場のマルシェ目指して足を速めます。

なんでまたこんな早い時間に、と、歩いている当の本人(ワタシです)がアキレてます。トマト求めて早起きって、どうよ。

ここのマルシェには農家直販の屋台が出るんですね。

その野菜はどれもみな味が濃いんですが、なかでも露地ものトマトの素晴らしさといったら、一度食べたら
(おねがい、もう一度だけでいいからまた食べさせて・・)
と、身をよじらんばかりになるほど。

そこで夏休み明け早々、文庫本片手にいそいそとマルシェに繰り出したんですね。なぜ文庫本片手かといいますと、去年のトマトの季節の行列が、テーマパークの人気アトラクション並みだったから。60分待ち、とかですね。

ところが今年は、去年までの行列はなかったんです。

(しめしめ)
と、文庫本を手提げにしまって台の品定めすると、ありゃりゃ、肝心のトマトが影も形もない。

どうしてッ、
と、いてもたってもいられなくなりました。今年の初夏はたいへんな雨続きだったから、ひょっとして今年はトマトなし? そんな、そんな・・・

ようやく番がまわってきたところで、焦燥感いっぱいに大スター不在を問いましたね。

「今日の分はもうすっかりはけちゃったよ」
と、農家のおじさん。

大ケース6個持ってきたのに、屋台の設営が終わった直後の7時半にはもののみごとに全部空になったゼ、と、おじさんの胸そびやかすまいことか。

(『ふかし』じゃないの?)と、実のところ疑いましたヨ。

ホラ、店のおじさんってよくおつり10円のところ
「ほい十万両!」
なんて大げさにするではないですか。フランスでも時折あるんです。

いくらなんでもその時間に完売って、あり得るでしょうか。あるいはひょっとして、業者が転売目的で買占めに来るのか。

(その業者断固として許せぬ)
と、無闇にハラ立てながら道を急ぎます。

広場では、薄暗い中どの屋台も設営に精を出している最中で、台さえ広げていないテントもあります。

フッ、と、一瞬さらに薄暗くなったので何かと見回せば、オレンジ色の街灯が消えたところでした。どう考えても、マルシェの買い物にはチト早すぎるとしか言えません。

が、お目当ての屋台に着くとなんとまあ、老齢のマダムがカートに手をかけすでにお待ちでした。

マダムは設営の終わりを辛抱強く待ち、
「トマト、今日は1キロ半でいいわ」

次がワタシの番で、たっぷり2キロちょうだい、と、口を開こうとした矢先、
「ボンジュール」「ボンジュール」
と、背後で立て続けに声がして行列がのびました。

ふり返れば、いずれも近所で顔見知りオトーサン。早朝の行列は業者連ではなく、いずれも地域の方々のようでした。

転売の不正は働かれないもよう。

毎度早起きはつらいので、背後のオトーサンがたは近所の親しい家族と示し合わせて交代で来ては5キロぐらいまとめ買いするそうです。

現在のフランスは食糧難からほど遠いですが、安くおいしいものにありつくには、これでなかなかタイヘンです。


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農家直販の屋台には輸入物はないので、バナナなどはこっちの屋台で。安く品が良いのでこちらも毎度長い行列です。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、牛(フォーフィレ)ステーキ、さいの目じゃがいもと白身魚の残りのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・投げ売り屋 [買い物]

買い物の帰り、磁石に引きつけられたごとく、用もないのに投げ売り屋へ吸い込まれました。

投げ売り屋の商品といったら、「過去」をはらんでいるのが特徴です。「過去」とは、以前出ていた店の売れ残りなど紆余曲折の末ここへたどり着いた、というような経歴。

とはいえ売り物はすべて新品です。

(こりゃ売れなかったのも当然だわナ)
と、ナットクさせられるガラクタがまた山と積み上がっているんですね。

その山に分け入るたのしさ。

お菓子やワインなど食料品も時として並び、
(どういう理由で前の店ではけなかったんだか)
と、賞味期限を入念に点検したのちカゴにとることになります(賞味期限切れで売られていることは金輪際ありません)。

こういう店、「バッタ屋」とも、以前は日本で言いましたよネ。

「バッタ屋」と呼ぶときには、さげすみが少なからずこもりました。すなわち、正規の仕入れとは違う。

バッタ屋、今日の日本にいまだ存在しているものなんでしょうか。経済的社会的に大いに躍進し、「ディスカウントショップ」へと昇華し切った気がするんですが。

ワタシが子どものころは、家族で浅草へ行くたびに、オトーサンとオカーサン(ワタシのオトーサンとオカーサンです)が喜々としてこのテの店へ寄り道していたものでした(くっついているワタシら子どもは飽き飽きして『まだぁ?』『まだぁ?』を連発)。

浅草は投げ売りのメッカという印象でした。

近所の食料品店や駅前スーパーではついぞ見かけないメーカーのサバ缶なんかを
「持ってけドロボー!」
と、寅さんよろしいオジサンが話術巧みに叩き売っている。

それを両親はおもしろがりましたが、子どものワタシは、こういうオジサンが怖かったもンです。

しかしおもちゃもまた、買ってもらえました。「リカちゃん」のパチモンの着せ替え人形やら、メーカー不明のショベルカーやら。

いずれも街の玩具屋で買うよりうんとお財布にやさしい(今日ビ街角の玩具屋といったら絶滅して久しいですが)。

でもやっぱり品物にあふれかえったあの店内はまがまがしさがあふれ、子どもには薄気味悪かったです。

ドンキや百均に、その雰囲気はかけらもありません。それに、「安かろう悪かろう」という概念も消失し、今では質に全幅の信用が置けます。

さて、ネギとび出てたエコバック提げて入った投げ売り屋は、あいかわらず大繁盛でした。お客の大半が、女たち。

いずれも、役に立ちそうもないガラクタを
「安く買いこんで役を吹きこんでやろう」
と、熱心に物色しているわけです。

この店には女性下着やセーターなど衣類も充実していて、試着コーナーもちゃんとあります。ファッションブティックとは一線を画する、日曜大工で一角を囲ったような試着コーナーで、今あたかもマダムが春物ブラウス片手に出て来たところでした。

ワタシは、1,99ユーロ(約260円)という値段に大いに心惹かれ、見慣れないパッケージのペストソースとチョコ菓子をカゴにとりました。

(スーパーで買っても値段はそうかわらなかったかも)
と、帰りの道すがら反省しきりとなるのが、投げ売り店での買い物後のならわしでもあります。


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で、格安で買った「ペスト」ですが、ふつうにペストと思い込んでいるバジリコソースではなく、ロケットサラダでつくったものだそうで(よく読めばそう書いてある)、味が思い描いていたものと違いました(ちょっとトホホ)。

前菜は、カボチャポタージュ
主菜は、牛ステーキ、じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・キャベツ百珍 [買い物]

めずらしいキャベツって、今流行ってるんでしょうかネ。

若者言葉でいうなら、
「今、キャベツがキテる」
ないしは、
「今、キャベツがヤバい」

「ちょ、マジで?」
と、せっかくですからキムタクさまに声をあげていただきましょうか。

ビストロスマップをなさっているキムタクさまなら今日におけるキャベツの動向をご把握に違いないとふみました。

いえね、ここのところマルシェに行くと、正確には、マルシェのなかでも野菜生産者じか売りの屋台を覗くと、
「なにこれ」
と、つい日本語で独り言が出ちゃうような、見たこともない野菜が並んでるんですヨ。

それらすべてキャベツだというんです。

フランスのふつうのキャベツは日本のと異なり、ボーリングの玉そっくりに丸くてずっしり重いです。

ホラよく縄のれんのお通しなんかに味噌を添えた生キャベツが出て来ますが、フランスのキャベツであれをやったら固くて噛みきれるもンじゃないです。

家庭では煮込み料理にします。

そのほかにも緑色の葉のちぢれたのや、ほろ苦くてサラダにすると美味しい紫キャベツなどが一般的。

ところが最近見かけたのなど、三角形にとんがってるんですヨ。

「白菜と見間違えたんじゃないの」
と、おっしゃりたいでしょうけど、目をこすってしかと見ました。

そして買って食べました。味はまったくのキャベツ。これ、イタリア発なんだそうです。

その隣りに並べられていたのは、深緑色で細長い葉が羊歯(しだ)みたいに八方に広がっていて、
「これもキャベツ」
と、言われた日には、にわかに信じられません。

これ、「トスカーナのキャベツ」といってやはりイタリア発なんだそうな。

「お金はいいからから食べてごらん」
と、屋台のマダムは、穴のあくほど見つめている客(ワタシです)に、気前よくオマケしてくれました。

生産者もめずらしがって栽培してみたはいいもののあまりに見慣れないところから売り上げがいまひとつ伸びず、持て余していたんじゃないでしょうか。

ここは販促に力を入れる時期、と、考えたのかもしれません。

トスカーナのキャベツは、日本では「カーボロネロ」または「黒キャベツ」と呼ばれ、数年前に上陸しているもよう。

お昼に即席ラーメンとともに煮込んでみたところ、味が濃くてちぢれた葉にスープがからんでとおってもヨロシかったです。

そこで、今度はちゃんとお金を払って買おうと勇んで行くと、
「悪いね、もうはけちゃった」

かわりにこれ、と、小ぶりの樅(もみ)の木みたいなのを指さすんですが、これまたキャベツというんですね。

こちらは、「オランダのキャベツ」だそう。

オランダでは枝みたいなこの葉っぱをざくざく切ってじゃがいもとともにスープで煮てざっとつぶしたひと皿が、国民的家庭料理だそうです。

「今ごろクリスマスツリーかい?」
と、抱きかかえてマルシェで買い物を続けていたら魚屋でもチーズ屋でもからかわれたので、エヘンとばかりキャベツだと説明したんですが、笑うばかりで誰ひとり信じませんでした。

オランダのキャベツは葉がかたく、火が通るのになかなか時間がかかりましたが、やはり味が濃くうっすら甘味もありました。


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落し物のマフラーがかけてありました(標識のところに黒いニットの、ドシーロト写真でわかりづらいんですが、見えるかナ?)。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズのサラダ
主菜は、ミートソースと極太マカロニ(リガトーニ、と、いうそうです、マカロニがゴムホースなら土管の太さ)、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・運命的恋愛 [買い物]

「誰かいい女性(ひと)いないッスかね」
と、肉屋に行ったら新顔の弟弟子(でし)に、兄弟子ピエールを横目でやりながら聞かれました。

ただ今パリ地区は学期休みで、店長のジルが休みを取って家族旅行に出かけている間、別の支店から新顔くんが派遣されて来ているんです。

新顔くんは、無口で実直なピエールとは対照的な、軽口のはずむ青年です。

「日本女性に的を絞りたいんだって」
と、横目つかいながら日本人のオバサン(ワタシです)にいたずらっぽい顔をむける新顔くん。

「そこまでは言ってないだろッ」
と、ピエールは大慌てです。

新顔くんが言うには、ピエール先輩のような勉強熱心で真心のある精肉職人にこれまで出会ったことがない、にもかかわらず先輩はといえば彼女いない歴が年齢と同じ満25年、それって不条理じゃないスか・・

それ、こないだうちまで店長のジルが言ってたことと同じなんですヨ。

牛挽き肉でも買おうと肉屋へ行ったら、包丁握ったなりで真っ赤になっているピエールを、店長ジルがからかい半分でかきくどいている真っ最中だったんです。

ジルがすすめる女性はというと、買った肉がショボかったとクレームつけてきた40代前半のマダム。近所の八百屋でバナナ一本ぽっきり買いを見かけて独り身の確信を深めたそうです。

歳の差カップルなどめずらしくないですしね。

「なにしろ住まいのアパートがすぐ近くなんだからさ」と、店長ジル。「午後の休みに横になれるんだぜ、繰り返すが、横になって身体休められるんだぜ」

ちょっとォ、ヒルネするための彼女なの?
と、ワタシも口をはさみました。

「ボクは断じて愛し愛されたいんですよ」
と、これまた大真面目に返答するピエール。

肉屋といったらなかなか苛酷で、午前7時から13時までと、いったん閉店して16時から20時まで立ち仕事の力仕事、午後の3時間をいかに休むかにかかっています。

職場近くに住まいを見つけた店長ジルはいったん帰宅して横になれますが、アパートの遠いピエールは寒空でも公園のベンチで過ごしているんです。

ピエールは、店で対応したその美熟女をふつうにお客としか思えなかった(そりゃマそうだ)。

「そこをもっと積極的にサ、横になったらうんといいことあるって」
と、人の悪いジルはやや卑猥な腰つきまでしてなおもからかいました。

「ボクは本気の恋愛がしたいんだよ」
と、ピエールが弱り切っているのでさすがにかわいそうになり、鹿爪らしく助け舟を出しましたね。

「ヒルネの関係はでも、本命ができたとき別れるのに苦労するわよ」

運命的に出会ってときめきたい、というピエールに、もっともだと思いました。

「だからそのためには出歩かなきゃだめなんだって」
と、新顔くんはもどかしげに足踏みせんばかりです。「先輩はほんッともう出不精の引っ込み思案なんだから」

「どんな女性がいいの?」
と、ピエールに聞いてみると、
「同世代で、宗教人種問わず、優しいひと」
と、これまた真剣な顔で答えるではないですか。

わかったわ、心当たりがいたら口きくわ、
と、心から約束して、鶏をロースト用にさばいてもらいました。


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前年のクリスマスごろからパリの山の手お金持ちあたりの子息の間で大流行だったもようの、電動スケートボード。学生街のうちの近所では乗っているひとをついぞ見かけたことなかったんですが、本日安物屋に発見。これからうちの界隈でも一足遅れではやるんでしょうか。安売りになっても4万円ぐらいと安くない値段です。

前菜は、オイルサーディンをのせたトマトサラダ
主菜は、レンズ豆の煮込みと挽き肉(以上残り物)のトマトソースがけチーズ焼き、モロッコいんげん塩茹で

立ち呑み日記・頭ゴチン [買い物]

朝市の八百屋に行列してたら、
ゴッチーン、
という派手な音がして、鉄パイプを組み立てたテント屋根が全体にゆさっと揺れました。

何ごと?! と、見れば、背の高いアメリカ人観光客の紳士が、かざしたカメラに気をとられ、オデコを横棒にいやというほどぶつけたところ。

目の上にさぞかし星が回っただろうなあ、というゴッチーンでした。

朝市の屋根は、鉄パイプの骨組みの上に木材で補強したシートが載せてあるんですが、雨が降ったら上部にたまらないよう後方が低くなっているんです。

この低いところに、アメリカ人紳士はついうっかりしたんですね。

上背のある人は、
「世の中いたるところ自分より低い」
と、頭ゴチンしないよう日常的に気をつけていると聞いたことありますが、巨漢大国アメリカでそんな心づもりなど不要、ふつうに歩いていてぶつかるなど想像だにしなかったことでありましょう。

東京在の、身長190センチの友人など、電車に乗る時はもう条件反射で
「おじぎする」
と、まで言ってました。

この友人はまあ例外として、欧州に来る日本人の男性はむしろ小柄で困ることがありそうです。

仕事など縁あって日本紳士を街案内して、ひと息いれるのに入ったカフェで、小用に立って席にお戻りになるとたいてい、
(ショックを顔に出すまい)
という顔なさってる。

「つま先立ちしました?」
なんて立ち入ったこと、当然ながら尋ねませんゾ。

「便器のヘリに付きそうで不潔でたまらなかった」
と、問わずともおっしゃる方は、思いのほかいらっしゃいます。

さて、フランスで頭ゴチンといえば、シャルル8世という王様を思い出さずにはいられません。

どうです、ロイヤル級の頭ゴチンです。この王様はロワール地方のアンボワーズ城で生まれ、この城で生涯を終えたんですが、その死因が、頭ゴチンでした。

城内にある手打ちテニス場に行くのに背の低いドアを通る時、うっかり額を強打した。

城には今もその低いドアが現存していて、見学客が王の二の舞にならぬようクッションがちゃんと貼ってあります。

でも、確かにオデコぶつけることもありましょうが、この程度のゴチンでほんとうに死に至るものなんでしょうか。

死までとなると、誰かが加担して強打させなければあり得ない気が、しないでもないです。

「ゴチン」は史実として公的文書に記されているようですが、21世紀の今に至るまでバレない佞姦(ねいかん)が、あったんじゃないでしょうかねえ・・

・・テナことを、フランス人を代表してわがオットに追及するも、てんで無関心。

それでフランス人と言えるんですかッ、
と、つい熱が入っちゃいますが、シャルル8世といったらアンボワーズでは町おこし的人物なれど、フランス史の大筋からすると太陽王ルイ14世などと違い、少なくとも中学校の歴史の授業では習わない王様らしいです。

硬膜下血腫、というオソロシい病名がシャルル8世の死因らしいんですが、マルシェで買い物すませたところで先のアメリカ人紳士とたまたますれちがったらおでこにパリみやげの立派なタンコブが生成されていたので、こちらは冷せばすぐよくなることでしよう。


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まだ寒くもなく暑くもなく、週末の深夜なかなかにぎわってます。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、うずらのコニャック風味焼き、モロッコいんげん塩茹で、蒸しじゃがいも、グリーンサラダ

立ち呑み日記・スター不在 [買い物]

「チキショー、トマトがあればなあ」
と、マルシェの屋台の内側で舌打ちする青物農家のご主人。

「景気どう?」
と、行列の常連さんに話しかけられたところです。

ご主人はパリ近郊の農家で、生産物を週三回このマルシェで直売しているんです。それがまあおいしいこと。そして安い。どの野菜も味が濃く、ワタシもまたスーパーの大量栽培モノにはもう戻れなくなりました。

界隈でこの屋台は有名で、毎度たいへんな行列です。早めに行ったら並ばなくてすむだろうと朝イチの9時に着いたらすでに大行列で唖然としたこともあります。

ご主人によると、屋台の設営が始まる7時の段階でもう待っている人がいるんだそうな。

(その気持ち、わかるなあ)
と、ワタシなども思いますね。

「あのおいしかったほうれん草はどこ?」
と、番がようやくまわって来て身を乗り出すように訊ねると、
「悪いね、ずいぶん前にはけちゃったよ」
と、返されるくやしさ。

こないだなど行列のシッポで自分の番を辛抱強く待ちながら、次々と人手に渡っていくカリフラワーを(あれ買おうっと)とじーと見つめていたんですが、なんと! ワタシの前の人で最後の一個がはけ、指くわえることとなりました。

そんなにも人気ながらなぜご主人が「チキショー!」と歯噛みしているかというと、夏の終盤にパリ一帯は雨が続き、一番人気のトマトの今季最後の収穫がオシャカになってしまった。

ここのトマトはほんッとうにもう、もうッ、おいしんです。

前回がその最後のひと山だったんですが、雨のせいで菌による病気が発生し、トマトの芯の部分が焦げたように真黒くなり売り物にならなくなっていた。

まだ青いうちに摘み取ったものは一見大丈夫そうなれど、熟したら黒くなるのはまぬがれないとおかみさんが肩を落とします。

売れないトマトが台にいちおう置いてあったのに、ご主人の並々ならぬ未練を感じましたね。ワタシらお客もまた未練たらたらでしたヨ。来年の夏まであのおいしいトマトとお別れとは長いなあ・・

「あーらトマトないのね」
と、今朝は列につかず別の屋台へ行ってしまうお客が何人も何人もいたのだそうです。

浮気っぽいその客の気持ち、これまたよくわかります。

台に花形のトマトがないのは、満員御礼の宝塚歌劇を観に行ったらトップスターが出てなかったのに同じ(と思うナァ・・)。

今、台に並んでいるのはサラダ菜各種および秋冬野菜の巨大な瓜や汁気の多そうなラディッシュ、にんじん、ニンニク、玉ねぎなど。

「ここの瓜はね、甘いスープにするよりオーブン焼きにして塩パラパラッのほうがうまいぞ」
と、ワタシの頭ごしに、後方に並んでいた紳士が、そのあまりの大きさに買うか買うまいか迷っている前方の若者へ手メガホンで話しかけました。

若者は二十歳そこそこの学生さん風。やはり手メガホンで焼き時間や使うべきハーブなど質問し、買う心づもりになったようでした。

「『アオクビ』が、来週あたり出るからね」
と、ワタシが日本人と見たご主人は、番がまわってきたところでおしえてくれました。日本発の大根各種を植えているのだそうです。


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ただ今ワルガキ二匹のハマっている『ワンピース』です。

前菜は、にんじん千切りサラダ
主菜は、フォーフィレ(牛肉ょステーキ、くずした白身魚フライとつぶしニンニク入りじゃがいもピューレ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・地産地消 [買い物]

遠いほうのマルシェに行ってみると、一軒の青物屋ばかりおッそろしく長い行列が伸びていて、隣りの屋台をくの字に取り巻かんばかりになっている。

これ幸いとそのシッポをつかみました。こないだ来た時は隣りの隣りの屋台まで行列がいってましたから、今日はまだいいほうです。

なぜこんなにも人気が集まっているかというと、この青物屋さんはパリ近郊の農家なんです。

地産地消、ですネ。いちどためしに買ってみたらまあ、トマトもサラダ菜などの青菜類も、おどろくほど味が濃い。

そして、安い。スーパーの野菜売り場のトマトや青菜にはもう戻れなくなりました。

ワタシなどその存在をつい先日知ったばかりですが、界隈では有名だったもよう。行列には、やはり遠征してきている顔見知りのオカーサンオトーサンが何人も混じっています。

待たねば買えないと腹をくくっているからか、列で本のページをめくっている人が幾人もいます。

お役所や病院の待合室などで待つのと違い誰にもイライラした感じがないのは、やはり安くて滋味深くておいしいものが目前に待っているからでしょうか。

立ち働いているのは、生産者である50がらみのご主人とおかみさん、今年80になるというご主人の御母堂。

「古色蒼然ヨ、けっこうガタ来てるし」
と、御母堂を横目でちらっとやりながら、列に向かって小声でご主人。

「聞こえてるよ」
と、御母堂はぴしゃりと言い返します。そういうやりとりがまた好ましく、長い列もそんなには苦になりません・・

・・とはいっても、牛の歩みながら番が近づいてくるのはうれしいものです。土まみれのじゃがいもの箱が、いよいよ目の前に来る。

この箱の横に、前回はロケットサラダが置いてあり、列の後方まで胡麻みたいな芳香が漂いました。

このとき、待ちきれない客が次々と箱に手をつっこんで選ったので、
「ロケットはここに置いちゃだめってあんなに言ったでしょうが」
と、ご主人はおかみさんに頭ごなしにやられることとなり、本日はお店の人にしか触れない場所に鎮座しています。

それでも目の前のじゃがいも箱から、常連さんは前回買った時の紙袋をリサイクルに持参して、買いたい分を選りわけています。

(♪いーけないンだーいけないンだー)
と、白い目で見る間もなく、
「それ禁止ッ、没収!」
と、生徒を叱りつける校長先生よろしく人差し指を振り上げるご主人。「こっちがちゃんと選んであげるから」

常連さんも紙袋はリサイクルのために持って来ているわけですから空袋の束をむしろ積極的にご主人に手渡し、選ったものが入った袋のみ手に残して
「次回からはしないって約束する」

生産物を右から左に売るのは仕入れるよりずっといいね、と、一人の紳士が話しかけると、
「そうでもないぜ」とご主人。

翌日は雨の予報ですが、そうすると完熟トマト300ヘクタールの畑ごと全滅なんだそうです。

「なら傘さしかければいいのよ」
と、暢気な声で、ワタシの前にいたマダム。

いったい何百本の傘広げればいいと思ってんのよ、
と、ご主人があきれ声だすうちに、いよいよワタシの番がまわって来ました。


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昔ながらのカフェが減って、このテのこぢんまりしたお店が増えたように思いますです。

前菜は、キャビア(ひとくちパンケーキにクリームぬった上にのせてレモン)、トマトサラダ
主菜は、鶏ロート、じゃがいもロースト、いんげん塩ゆで、グリーンサラダ



立ち呑み日記・桜餅を買いに [買い物]

エ、お店なくなってる?
と、一刻も早く近寄って中をのぞきこもうと車道に飛び出しかけ、鼻の先を通り過ぎ行ったタクシーの運転手さんに大いににらまれました。

桃の御節句の昨日、夕闇迫る中、桜餅を買いに「とらや」へ行ったんです。「とらや」はかの有名なる和菓子の老舗、パリっ子に知られたとてもおしゃれな店です。

かき入れどきのはずの3月3日に店の灯が消えているとなるとこれは天下の一大事。

おっとりがたなで近付くと貼り紙があり、
「店内改装のため2月より6月まで休業いたします」

やれうれしや撤退などではなかった、と、不況の昨今のこと胸をなでおろしましたが、そうなると本日の桜餅はどうなる。日本ならデパ地下に行けば選ぶのに迷うほど種類がありますが、ここではそうもいきません。

桜餅なしでとも考えたんですが、桜の葉の香りが脳内にちらつくと、やはり季節のお菓子が食べたくてたまらなくなってきました。

古くからある日本食品店へと、気がつけば歩き出してました。

でも生の和菓子なんて置いてるかしらねえ・・
と、店内を見回すや、どうしたわけか磁力のごとく冷凍ケースに引きつけられ本能に従ってのぞきこむと、あったあったありました、桜餅。

岩手県の会社が製造販売している冷凍食品の道明寺です。こんな冷凍食品もあるんですネ。ホクホク手に取ってレジに並びます。

「すみません」
と、その時、さっきからワタシとすれ違いにあれこれ検分なさっていた、在仏年月の長そうな熟年世代の日本人マダムがレジの女性に声をおかけになりました。

「ひな祭りの、ほら、ほら、あれ、あります?」

あまつさえ、つまんで口にほうり込むしぐさまでなさっています。

(わかるなあ・・)
と、しみじみマダムを盗み見ちゃいましたヨ。「ひなあられ」という言葉が、完全忘却したわけではないにもかかわらず一瞬出てこない。

クリスマスと違ってフランスでひな祭りは街中にその片鱗がないですからね、何が必要だったっけ、と、ゆ-っくり考えながらでないと、揃うものも揃いません。

実を言いますとワタシもまた桜餅は今宵のデザートにと強く思いましたけど、ひなあられの存在はてんで忘れてました。

(・・ウンあったナ、ひなあられ)
と、ここでようやく思い出した始末。(ちょっぴり入ってる丸くて大きいのがおいしいんだよナ)

しかし、お店の方は申し訳なさそうに、
「ひなあられ、全部売れちゃいました」

「他に何かあります? ひなまつりの食べ物」
と、マダムは再び質問なさり、
「エート・・、何かあったっけかな」
と、レジの方は独り言をおっしゃりながら手が止まります。

ちらし寿司のもとだって、冷凍桜餅だって、いろいろありそうですが。そこで列の背後から、我が手の冷凍桜餅を高々と掲げて見せてあげました。

「・・・・・・ああ桜餅、ありましたねえひなまつりに」
と、レジの方は遠い目になりました。

「・・・・言われてみればそうだったわねえ」
と、熟年世代のマダムもまた遠い記憶をひっぱり出し、冷蔵ケースのほうへ向かわれたようでした。


PIC_0143.JPG
マルシェの花屋にミモザの花が出てました。春もすぐそこ。

前菜は、カボチャのポタージュ
主菜は、メルゲーズ(羊の生ソーセージ)、モンベリヤール(半生サラミ)、フランクフルト、酢漬けキャベツ、モロッコいんげん塩茹で、茹でたじゃがいも

立ち呑み日記・シャーリー探し [買い物]

日本でも報道されたことでしょうが、本日(2015年1月14日)、凄惨な打撃を受けた風刺新聞『シャーリー・エプド』の最新号発行となりました。

使用不能となった編集室に代わり『リベラシオン』紙が協力を申し出て一室を貸し、生き残ったスタッフが製作した号です。

通常6万部のところ、今回は事前発表で3百万部。

「『シャーリー・エプド』紙って日本でいったら何?」
と、パリに遊びに来た友人からキオスクに通りがかりに聞かれると、
「『月刊宝島』や昔の『ビックリハウス』、って感じかな」
と、よくたとえたものですが。

美容院や銀行などに置いてあるような発行部数の多い雑誌とは違う趣味性の強い、読みたい人は読むがそうでない人はまったく手に取らない雑誌。

それがこの異例の発行部数です。ワタシも今朝買いに走りましたヨ。

結果から先に言いますと、手に入りませんでした。

「ここにホントに残ってるの?」
と、長―い行列の尻尾をつかんだワタシの背後にやって来た知り合いのオトーサンに訊かれました。
「この界隈はどこにもないよ」

朝の9時ですゾ。3百万部も刷っているなら何部かはこのキオスクに残っていてしかるべきではありませんか。

「いや、もうフランスのどこにもないと8時のニュースでやっていましたよ」
と、前に並んでいた紳士が言葉を継いだので、たまげました。

予約販売ですべてはけ、ではなぜ並んでいるかというと再刷版を予約するためで、氏名など書きこんだりする都合上、列が遅々として進んでいないのだそうです。

「ひと昔前の東欧みたいだねえ」
と、背後にどんどんのびていく列を見やって、紳士。

「あら売れ行きが良いのはいいことよ」
と、その前にいたマダムがこちらを振り返って会話に加わりました。「再開の助けになるなら越したことないわ」

このマダムはこれまでた・だ・の一度も『シャーリー・エプド』紙を手に取ったことがないそうです。

「売り切れか」
と、そこへ犬連れてやってきた別の紳士が、進まない行列を横目で見て声をあげました。「仕方ない、『フィガロ』買ってくかな」

ここのところ紙媒体は苦境にありますが、今日ばかりはどの新聞・雑誌にも追い風が吹いたのではないでしょうか。本命が売り切れというなら、せっかく並んだことだし別のを買って帰ろう、ト、どうしたってなる。

ワタシの背後でスマホをいじっていた知り合いのオトーサンは列を離れました。ひと足早く来てこのキオスクで買えなかった友だちから、角のカフェでひと休みしてるとラインが入ったのだそうです。

「万にひとつ買えたら見せてあげるわ」
と、ワタシも約束して別れました。

いよいよワタシの番です。

万にひとつはなく、予約を申し込むことになりました。

「何部いる?」
と、聞かれてちょっとおどろきましたが、みなさん3部とか4部とか予約しているもよう。

小銭で買える値段だし、予約となると「せっかくだし」という気持ちが働くんでしょうネ。1部は家宝にしたとして、あとはどうするものなんだか。

結局、本日は70万部発行され、増刷含め5百万部発行されるようです。

「再版到着は来週初めになります」
とのことです。


写真はしばしお待ちくだされ。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、七面鳥腿肉ロースト、レンズ豆煮込み、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・福袋 [買い物]

お正月2日、午前10時。

ただ今より観に行く初春歌舞伎のお弁当を銀座三越の地下食料品売り場で仕入れようと、銀座駅の改札を出ました。

すると、おびただしい人数が行進していた。

「立ち止まらないでください」
「列でお入りください」
と、メガホンで声張り上げる人員整理員も何人もいます。

すわ何ごと? と、見回すと、ひやー、みなさん銀座三越へ初買いに繰り出して来た方々。

こ、これではお弁当など買えないのではないかしら、と、大いにひるみ、劇場内のお弁当で手を打とうと連れに申し出ました。

「とりあえず並んでみようよ」と、連れことフランス人の食通の親戚。「三越地下食料品売り場といったらうまいものがあるからさ」
食通の親戚は仕事などの関係からただ今日本に長期滞在しているんです。

列は角を曲がってえんえん続き、行列の尻尾は見えません。

おっとりがたなで逆流し、地下道をはるか行ったところでようやく「こちら最後尾です」の看板にたどり着きました。

さらにそこからえんえん列に従っていると、さっきワタシらがひやーと驚いていたあたりで年配のご婦人お二人がのんびりと、
「ここで待ってれば列の最後尾が来るでしょ」

来ませんよ、と、おしえてさしあげたかったんですが、なにしろ立ち止まること叶わず、列に従うまでです。

歩きながら仕入れた情報によると、館内にいったん入れば、ある人は2階へまたある人は3階へと分かれていくのでそんなには混雑していないもよう・・

「お弁当売り場はどうでしょうッ」
と、聞きたいところでしたが、そうもいきませんでした。

いよいよ地下1階食料品売り場に入ると、行列の意味がやっとわかりました。福袋をお目指しだったんですネ。どの店にも山積みになっています。

福袋、みなさんも買われました?

食料品売り場にも人気店がいろいろあるようで、そういうところにはさらなる行列と「こちら最後尾です」のプラカードが出現しています。

圧倒されてしばし眺めまわしていましたが、のんびりしていては開演時間になっちゃいます。

「こっちこっち、銀座三越は地下3階がいいんだよ」
と、フランス人におしえられるかっこうでエレベーターを下りました。

「スシハドコデスカ?」
と、食通は自らとんかつ売り場の方に質問しています。

途中、お刺身売り場にひっかかり、大トロをさくで「買おう」と言い出したので、言葉を尽くして断念してもらいました。

劇場の包丁もないところでさくに噛みついていいことあるんだか。そもそもお刺身など幕間に食べるべきものでしょうか。

結局、大トロ・中トロ・赤身の三種入ったにぎりもり合わせ1人前1200円ナリを購入。

おせんにキャラメル、あとそうそう、都こんぶなんかも子どものころ観劇といったら買ってもらったもンだナ、と、頭をよぎりましたが、今回のところはまあ買わないでおくことにします。

代わりに簡単につまめるプチトマトを買い、女子トイレの洗面所でさっと水洗いして準備万端、いざ歌舞伎座へ、地下通路で向かいました。

写真はしばしお待ちを。カメラがこわれてしまいました(涙)。

前菜は、プチトマト、ニンジン塩茹で、
主菜は、焼き肉、インゲンとブロッコリー塩茹で、焼きうどん




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