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立ち呑み日記・海苔弁 [ランチ]

本棚の、向田邦子のエッセイ集になんとなーく手が伸びパラパラやっていたら、
「海外旅行から帰ったらまず何食べる」
というくだりがありました。

おりしも日本から幼なじみが遊びに来て肩並べて街歩きなどたのしみ、「またねー」と手を振って帰っていったところ。

彼女は、羽田国際空港に到着するや自宅直行ももどかしく空港内の和風レストランののれんをくぐり、鯛茶漬けをサラサラっといったそうです。

いいナ。うらやましいナ。

往年の大作家はというと、半月もの北アフリカ滞在で羊肉に食傷して帰国した折、台所で真っ先に作ったのは「海苔弁」だったそうです。

「塗りのお弁当箱に(ご飯を)ふわりと三分の一ほど平らに詰める。かつお節をしょう油でしめらせたものを、うすく敷き、その上に火取(ひど)って八枚切りにした海苔をのせる。これを三回繰り返し」、蓋をして五分ほど蒸らす。

どうです、久々に海苔弁、食べたくなりませんか。

「海苔弁」と今こう言われるとしかし、白身魚のフライやらちくわ天やらがご飯にかぶさった黒い海苔の上にのっかっている姿のほうがどうしたって目に浮かんじゃいます。

海苔弁は、1980年代初頭、ほか弁の台頭により大変貌を遂げたんですね。

「こんなの断じて海苔弁ではないッ」
と、「ほっかほっか亭」が街角で目につき出したころ、十代のワタシが物珍しげに海苔弁250円ナリを買い携えて家に戻ったら、仕事帰りの父がアキレ声を出したものでした。

「海苔とかつお節の断層がまるっきり無いじゃないかッ」

父は向田邦子と同世代、子ども時分の美味しかったものバナシとなると一にも二にも
「海苔弁!」

「断層は三段ッ、 海苔弁というからには断然三段!」
と、力をこめます。

大作家もまた三段と明言なさっており、昭和初期はこれこそが理想の海苔弁の姿だったのでありましょう。

父があんまり言うものだから当時のワタシまでも三段海苔弁にあこがれたんですが、
「三段は無理ね、二段だってむずかしいんだから」
と、お弁当箱のフタをぎゅーっと押しつけながら、母。

昭和初期とうってかわり、1970~80年代の、ことに女子用お弁当箱は薄かったですからね。

それでも三段層をこの目でしかと見てみたい願望衰えず、あるとき母が不在で姉のワタシが弟のお弁当をつくることとあいなった折、ぎゅうぎゅうのぎゅーッと無理やり詰め込んで、ついに三段達成。

他のおかず入れる余地なし。だいいち本来の海苔弁は海苔とかつお節こそがおかずだったわけですしね。

「おいしかった?」
と、学校から帰って来た弟に尋ねると、返事の代わりに水道に口つけてごくごく飲み続けます。

「しょっぱすぎ」
と、ようやく口を開き、
「それに肉も野菜もなしでひたすら黒く茶色いだけで、むなしい」

ほか弁会社の方々も、飽食の時代に入りわが弟と同様の経験あって新生海苔弁を開発するにいたったのではありますまいか。

クックパッドを見ても、ご飯のみの海苔弁はないみたいです。おかずが何かしら入ってる。

ワタシとて、ご飯だけじゃやっぱりヤだなあ・・

大作家もまた、
「肉のしょうが煮と塩焼き卵をつけるのが好きだ」
とありました。


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文芸評論家の饗庭孝男先生の訃報を知りました。先生は学生時代の恩師です。先生が研究休暇でパリにいらしていた折私も学生で滞在しており、ご自宅にお招きいただき手づからの焼き餃子をご馳走になったこともありました。そのご研究休暇の日々を綴ったエッセイ『フランス四季暦』(東京書籍)に、日々の散歩コースにある雑貨屋として登場するのがこの店です。先生の御冥福を心よりお祈り申し上げます。

前菜は、さいの目エマンタールチーズ入りトマトサラダ
主菜は、七面鳥ささ身ムニエル、チーズをからめたスパゲッティ、いんげん塩茹で、ベルギーチコリサラダ


立ち呑み日記・目玉焼き [ランチ]

「オカーサン、パンちょうだい、パン」
と、早お昼の食卓で身を乗り出さんばかりの、14歳のムスメ。

ムスメの皿には、黄身だけになった目玉焼きがあります。

白身をブロックくずしのように食べ進み、ほぼ生のままぷっくりした黄身をくずさないよう細心の注意を払ってさらに黄身下までナイフをそっとさしこみ丹念にこそいで食べた後の、黄色い盛り上がり。

目玉焼きに目がないムスメは毎度こうやって大好物のクライマックスを迎えるんです。ぷっくら黄身の上層にさっとナイフをいれ、黄色いドロリンをまず皿にこぼす。

いちどなど、(さあいよいよ)という間隙(かんげき)をついてオトウトがちょっかいだし、ぷっつくらへ横からナイフをすべらせたのでさあ大変、誇張でなく刃傷沙汰になりそうな激しさできょうだいげんかとなりました。

12歳のムスコは目玉焼きを平凡に、白身と黄身適宜に食べすすみます。

さてムスメは黄色いドロリンが皿に広がったところで、表面に黄身が少々残ったなりの白身の「台」をまず賞味するんですね。

下面が油でカリカリに焼けた、もっともおいしい個所。

しかるのちにいよいよ、さきほど身を乗り出して所望したパンを千切っては黄色いソースを、皿がぴかぴかになるまでぬぐっていきます。そのシヤワセそうなことといったら。

パンは、バゲットです。

卵料理の中で目玉焼きに限って、食べ方をああだこうだすると思いません?

ホラ、映画『家族ゲーム』で、伊丹十三演じる父親の日々のたのしみという、目玉焼きの半熟の黄身にじかに口つけてチューチュー吸うシーンがありました。

「目玉焼きの正しい食べ方」というエッセイが、後に映画監督になっていくこの大俳優の著作『女たちよ!』のなかに収められているもよう。

「アメリカでは目玉焼きの黄身を一種のソースととらえ白身とまずぐちゃぐちゃに混ぜてから食べる」
という文章を、出展は失念しましたが読んだことあるんですが、(まさかァ)と、その時は気にも留めませんでしたね。

ところが後にアメリカ旅行し、朝ごはんにホテル近くのショッピングモールにあるファミリーレストランに入って瞠目しました。

アメリカ人の親子連れが目玉焼き付きブレックファストセットをとり、半熟を選んだ父と小学生くらいの息子が当然のごとく半熟目玉焼きをぐちゃぐちゃにしていた。

ビビンバを丹念にまぜまぜする韓国もまた目玉焼きのこの食べ方が採用されていてしかるべきのような気もします。

糸井重里「ほぼ日刊イトイ新聞」の南伸坊との対談でも目玉焼きの食べ方に言及していましたが、
「白身を黄身に浸して食べる」
というのを奨励なさってました。

目玉焼きひとつにもお国柄って出るもンですネ。

目玉焼きに何かける? っテのも永遠の話題です。

先の南伸坊さまは、
「しょうゆ、ないしはソース」

ワタシは、子どものころは食パントーストを合いの手に塩で食べるのが大・大・大好きでした。それにハムエッグ(こちらは塩かけず)、好きだったナァ・・

今、バゲットを合いの手にしてますと、バゲット自体に塩があるせいか、目玉焼きはプレーンが一番ヨロシイようです。


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小春日和の週末です。セーヌ河岸のこのあたりは夏前まで車専用道でしたが感じのいい散歩道になりました。

前菜は、鶏出汁スープ(昨日のプロポという雌鶏一羽入りポトフ風の残りです)
主菜は、プロポの残り肉(雌鶏の出汁の出来った肉)と同じく煮たじゃがいものトマトソースがけチーズ焼き、いんげん塩茹で



立ち呑み日記・一風堂 [ランチ]

アー美味しかったナー・・
と、何度も思い返すまいことか。

今年の春にラーメン「一風堂」がパリにもついに上陸し、店頭にのびる行列へ長らく横目をつかっていたんですが、このたび時分どきやや過ぎてふと通りがかった折に、ついに入店かなったんです。

(一風堂って「すみれSeptember Love」?)
と、ワタシなどすぐさま連想しちゃいますが、土屋昌巳とは無関係だそう。博多のラーメン屋さんで、ロンドンやニューヨークで大評判、とは、かねてより聞き及んでおりました。

胸ときめかせて店内にすべりこむと予想に違わず、「日本食慣れ」雰囲気濃厚の地元民で満席です。

ワタシが語学留学生だった1980年代後半、東京銀行の真ん前に暖簾をあげる「よっちゃん」というラーメン屋が評判でしたが、客の大半は日本人で、たまさかに見かけるフランス人はといえばどんぶりに向かうやフォークとナイフを取り上げ、ちゃっ、ちゃっ、と、麺を食べやすいよう切っていたものでした・・

・・それも今は昔、東銀も「よっちゃん」も消滅し、ことに今年はテロのあおりで日本人観光客は激減(去年の半分以下だそう)、代わってジャパンフェスティバルが年追うごとに隆盛し、日本通フランス人は日本人以上に日本文化を体得するまでになっています。

現に、ワタシの背後から続いて入って来た女性二人組など、テーブルに案内されコートを脱ぐ間も惜しんで立ったまま、
「シロマル、タマゴ、メン・カタ、アン・カエダマ」
と、流れるがごとく注文しているのでたまげました。

白丸は一風堂の正調とんこつラーメンで、タマゴのトッピングに麺固めの替え玉1(アン)、ト。

どうです、日本人ながらいまひとつラーメン慣れしてないオバサン(ワタシです)にここまでよどみなく注文できるでしょうか。

メニューを吟味に吟味を重ね、
「鶏醤油おねがいします、(麺のかたさは?)エートエート、ふつうで」
(店長らしき日本人男性が注文を取りに来てくださいました)

東京のベッドタウンで育ったワタシはラーメンといったらまず醤油味。ただ、あとで知ったところによると、一風堂はとんこつラーメンが真骨頂で、「鶏醤油」はパリ店独自のメニューなのだそうな。

宗教上豚肉を禁忌とするパリっ子は少なくないですからね。同様に、菜食主義者のことも考慮した野菜ときのこ出汁の麺もメニューにあるようでした。

待つこと数分、ついにワタシの前へ湯気モウモウのどんぶりがやって来ました!

スープをひと口フーフーしながらのむと、やさしくすっきりした醤油風味。

ラーメンの麺のかたさを選ぶとはこれまで考えたこともなかったですが、ツウはかためを選ぶものなんでしょうかネ、周囲の誰もが「カタ」と打てば響くように指定しています。

「カタ」と言ってみればよかったかナ、でもスープをはじくまでのかたさだったら困るナ・・

・・と、思いめぐらせながらズルズルやっているとたちまちに底が見えてきました。

焼き餃子もまた注文したんですが、オチョボ口のひと口サイズが6個で6ユーロ、美味しかったですが1個1ユーロ(約125円)はチト高く感じました。


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地下鉄から上りながらパチリ。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、鶏ローストとじゃがいもローストの残りの赤ワイン炊き、いんげん塩茹で、グリーンサラダ



立ち呑み日記・白髪そうめん [ランチ]

お昼に、アジア食材店で買ったそうめんをゆでながら、つらつら考えた。

このそうめんは、「白髪素麺」、Japanese style Somenと明記してありますが、中国製です。素麺って、中国や韓国、それにベトナムやタイでも一般的に食べられているんですってネ。

食べ方はお国柄が出て、韓国は肉や魚などとコチュジャン炒め、ベトナムは牛肉の炒めものと生野菜をのせたニョクマム和え、中国は坦々麺や汁麺、タイはグリーンカレーをつけたりするのだそうです。

今回買った中国製は、ひやむぎほどにも太いのに袋を開けて気づきました。

韓国製もまた、「揖保の糸」などと比べると太目で、日本製のようにさらっぱらっと口中でほどけるのではなく、心なしかむっちりしています。

コチュジャンや坦々麺のみそに絡みやすいようにできている感じ。

とはいえ、やはりこれもアジア食材店で買った「ミツカン追い鰹つゆ・濃縮2倍」を希釈したつゆにつけても十分おいしいです。

薬味は、台所常備の乾燥エシャロット・・

・・エート、白髪そうめんを茹でながらつらつら考えていたんでした。何につらつらしていたかというと、「白髪」。そうめんはなぜ「白髪」を持ち出すんだか。

「白くて細いからでしょ」
と、おっしゃりたいでしょうが、じゃあ聞きますけど、「白髪(しらが)」と言われて、(おいしそうだな)と思います?

ワタシなど、我が頭の白髪のことはなるたけ隠してすませたい。

カラーリングして、それも、「染めましたーッ」というあからさまな黒々でなく、もっとこう自然な色合いで、
アーラ白髪なんてちっとも目立たないでしょ(ホントは白髪イッパイなんだけどサ)、
という顔を、しゃあしゃあとしていたい。

それだというのに、そうめんに限って「白髪」「白髪」といいつのる。

イカスミを折りこんだ黒髪そうめんなんて、あるんでしょうか・・

・・・と、冗談半分で検索してみたら、なんと、ちゃんとあるそうです。

「黒髪」にしてもねえ・・

ワタシが言いたいのはですね、食べ物に「髪」を持ち出すのはいかがなものか、という点なんですね。

だって、みなさんが台所で作ったひと皿に、ふとした拍子で髪の毛がほんの一本ついうっかり落ちてごらんなさい。

「髪・の・毛・が・入・っ・て・るぅーッ」
と、家族からもう毒でも盛ったかのごとく糾弾されます。

身体の部分を食べ物の名称にするのはしかし、エロチックではありますね。

パスタのトルテリーニの別名は、「ヴィーナスのおへそ」。昔、イタリアのある料理人が、美女が入浴しているのを覗き見してそのおへその美しさに瞠目し、トルテリーニの形を思いついたのだそうな。

映画「アマデウス」に登場する、ザルツブルグの銘菓は、「ヴィーナスの乳首」。マロンクリームをホワイトチョコでコーティングした白い半円の上に、いかにも舌をあてたくなるピンク色の突起がぽっちり・・

・・ということは、そうめんにも
「ヴィーナスの」
と、つけてみたらどうでしょう。

「ヴィーナスの白髪」。

でもやっぱり白髪といわれるとどうしても、所帯やつれがしてきやしませんか。


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小公園の八重桜もすこーしずつほころびはじめました。

前菜は、トマトとミニマカロニとツナのマヨ和えサラダ
主菜は、七面鳥ささ身のムニエル、チキンライス、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・ラップサンド [ランチ]

「ラップ食べてみたいなあ」
と、13歳のムスメがマクドナルドの前を通りがかるたびにつぶやいていたところ、ラップ用パンがスーパーにあったので買ってみました。

ラップ、ただ今フランスのマクドナルドで鋭意売出し中なんです。

ホラ、クレープみたいな丸い薄焼きパンでレタスやらの具をロール状に巻いたサンドイッチ、日本ではスターバックスなどでおなじみのようです。

ラップサンドって、世界的に流行ってるみたいです。フランスではスーパーの冷蔵スナックコーナーにも、切り口も鮮やかに置かれています。

ぱくっと食べやすそう、ではありますが、
(いまひとつ食指が動かないなあ・・)
というのが、ワタシの正直なところ。

スーパーの冷蔵スナックコーナーといったら、いかにもまずまずしい三角サンドやら冷凍を解凍した貧弱なスシやらが並んでいるんです。

その末席に並ぶ代物の、どのあたりに期待がもてるというのか。

ラップは、メキシコのブリトーが起源だそうです。ブリトーは、トウモロコシ粉でできたトルティーヤの親戚にして小麦粉の薄焼き。

それが、メキシコ人も多く住み生き馬の目を抜くニューヨークで、見た目も美しくてつまんで食べやすく腹にたまるというので流行り、世界へ伝播していった。

東京ディズニーランドでは焼きそばをくるんだラップが期間限定で売り出されたそうで、これなどとおってもおいしそうです。

が、だからといって正調焼きそばパンを凌駕できる日は来るのか。

ワタシの買ってみたラップ用パン(6枚入り)、袋には食べ方のアドバイスがいろいろ書いてありました。

具はお好みで、マヨネーズなどの調味料も
「たっぷり入れた方がおいしいです」

ブリトー風にするなら、具をのせて下方を少し折りこみ、次いで左右を着物の襟(えり)を合わせるように重ねて、具が落ちないようにする。

ファヒータという温製料理にするなら、皿に広げた上に肉野菜とソースをのせる。

「スシパーティーはいかが」
という提案もあり、これは具をクルクル巻いて太巻き状になったところをひと口大に切り、ばらけないように楊枝をさす。

「それちっともお寿司じゃないじゃないの」
というお声も聞こえて来たようですが、寿司でなくてスシ、それもスシの「感じ」、ですからね。

デワ、ブリトー方式で、冷蔵庫のありあわせからチーズ、残り物の塩茹でいんげん、薄切りトマトとロケットサラダを広げてマヨネーズをかけまわしたところを畳んで、ぱくり・・・

・・・ウーム・・

具はあれとしても肝心の薄焼きパンに風味がまるでない。スーパーの大量生産品ですから当たり前ではありますが。

これなら、レバノン食材店などで売っているピダパンで巻くほうが格段においしいです。

このあたりがラップの伸び悩み点ではありますまいか。すなわち、アメリカ発だけあって土台のパンが大味な工業製品なのが否めない。

今後、ラップは、ピタパンやクレープなど既存の同様品を越えられるのか。

クックパッドにはラップ用パンを焼くレシピがさまざま紹介されているところを見ると、やはり自家製だととおっても美味しいのでありましょう。


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陽が少しずつ長くなってきました。ただ今18時です。

前菜は、トマトとさいの目エマンタールチーズ、ルッコラを添えてバルサミコをかけまわしたサラダ
主菜は、仔羊腿肉・鴨肉・牛挽き肉(すべて残り物)の電子レンジチン、いんげん塩茹で、スパゲッティペストソース




立ち呑み日記・焼きそぼ [ランチ]

12歳のムスコの、成績がただてさえ低空飛行からの急降下で先生から保護者面談に呼び出され、こってり油を搾(しぼ)られた帰り道。

搾られた油を補給しなきゃやっとれん、テナ心境になり、味にほまれ高い中華レストランへ迂回してお昼を食べてから帰ることにしました。

おりしも店頭のガラス窓越しに、あぶらがまわってつやつやした焼鴨と焼き豚が吊るされています。

この店は在パリ日本人の間でつとに知られ、海老入りワンタンスープが名物です。入り口を入ったすぐわきの大鍋で盛大に湯気あげて茹でられている海老入りワンタンは、プリッとしたところへ朱色の辛味ソースをチョンとつけてハフハフやるとたまりません。

今日もそれにしようかなあ、とも思ったんですけど、メニューをめくるうちに、「焼きそぼ」というややあぶなっかしい日本語表記が燦然と光を放っている、ような気がして来ました。

「豚焼きそば、おねがいします」

この店には友人や家族と連れ立って来てはあれこれ分け合って食べていますが、考えてみれば焼きそばひと皿まるまる一人で食べるのは、これが初めてです

「うちの焼きそばは固焼きそばですがよろしいですね」
と、注文をとりに来た中国人の店員さん。

「のぞむところです」

あと季節野菜炒めもたのんじゃおうかなあ、
と、頭によぎる間もなく、店員さんはメニューをさっと取り上げ行ってしまいました。後でちゃんとわかりましたが、一人では焼きそばに加えてもう一品は量が多すぎました。

店内は、ほぼ満席。

ワタシの横は、首から名札下げた円熟女性四人組で、おのおのが炒めもの一品とお茶碗におテンコ盛りの白飯で、自分のとった料理のみを定食風に賞味しています。

せっかく四品あるのだからみんなで分けあえばいいのに、と、アジア人(ワタシなどです)は思いますが、フランス人にその食べ方は思いもよらないんですね。

その遠方の席に、取り皿を置く空間もないほど料理を満艦飾に並べてあちこち箸を動かしているフランス人カップルもまたいましたが、こういう方はおそらく本場中国の滞在経験がおありなのだと思います。

「本ッ当に全部の料理を一度に持って来ちゃっていいんですね」
「ウン、本ッ当にいいヨ」「遠慮しないで」
という、中国人の店員さんとそのフランス人カップルの会話が漏れ聞こえてきました。フランス人は、前菜ついで主菜というふうに二度に分けて食べるのが一般的です。

それにしても中華はやっぱりいろんな料理をあれこれ味わうのが楽しいですよネ・・

・・と、そこへ、いよいよワタシの豚焼きそば登場。モヤシと薄切り豚肉をジャーッと炒めてとろみをつけたのがたーっぷり、お皿からはみだしかけているカリカリ麺の上から熱々としたたれ落ちている。

真ん中をつつくと湯気が一気にたち、今はくったりとなったかた焼きそばが姿を現します。

フーフーして食べると、日本の、商店街の定食屋さんの豚もやし炒めを思い出させるなつかしくも力強い味。

そのおいしいこと、夢中で箸を動かしましたが、やはり中華なのに一品コッキリというのがこころさみしく、向こうの満艦飾に時折目をやり「借景」させていただきました。


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パリ市庁舎の前を通りがかりにパチリ。

前菜は、カボチャポタージュ
主菜は、鴨胸肉ソテー・ぶどうとコニャックのソース(残りものの流用)で 薄切りじゃがいも重ねのグラチネ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・バーガー台頭 [ランチ]

フランスでハムバターサンドがバーガーにこのままいくと凌駕されるであろう、
というフランス語の記事を読みました。

バゲットにバターごってり塗ってハムをはさんだサンドイッチは、スナック界のフランス代表といっていい重鎮です。

それが、アメリカ代表に国内首位の座をもぎとられつつあるというんですからおだやかではありません。

2015年1年間で消費されたハムバターサンドは12億3千万個で、消費された全サンドイッチの55パーセントにあたるのだそうな。

ところがその消費量は右下がりになっている。

代わってバーガーは11億9千万個、これは前年より11パーセント上昇。

「今後2年のうちにバーガーのほうが上回る」
と、マーケティング会社はみているそうです。

:2009年に書かれた記事もたまたま見つけたんですが、
「ハンバーガー1つ売れる間にサンドイッチ8つ売れる」
とのことで、
「フランスはサンドイッチのほうがバーガーより売れる世界でもめずらしい国」
と、同じマーケティング会社が解説しています。

それが、7年の間にここまでになってしまった。

ハムバターサンドはアメリカのビッグマック指数のように、毎年フランスの物価の指標に使われているのだそうです。

そのお株をバーガーに奪われてしまうのか。

なぜ、ハムバターサンドが凋落の道をたどっているかというと、値上がり、これにつきます。

同じ値段で、ファストフードに行けばお肉みっしりでほかほか温かいところが食べられる、となれば、つめたくカサカサしたほうを遠ざけるのは、自明の理ではないでしょうか。

ファストフードといえばジャンクフードのイメージでしたが、今やカフェなど昔ながらの飲食店のメニューにもバーガーは進出しています。

日本でもグルメバーガーと呼ばれ、2010年ごろから人気のようです。日本の価格帯は1000円から1500円、フランスもだいたいそれくらいです。

今やフランスの75パーセントのカフェ・レストランにバーガーがあり、そういった店の80パーセントが「売れ筋」と答えているそうです。

言われてみれば、以前ならカフェでお昼に
「ステーキは胃にもお財布にもちょっと重いわネ」
なんていうときにメニューを子細にながめ、
「あらバーガーがあるじゃないの、気が利くワ」
などと思ったものですが、気が付けばメニューにあって当然と感じるまでになっています。

ステーキもバーガーも同じ肉なのに何が違うの?
と、思われるでしょうが、違いますね。

ステーキは「主菜」ですから、カフェでこれ単品となると前菜を省いた中途半端感がつきまとう(一品だけ食べている人だってもちろんいるんですヨ)。

そこいくとバーガーは一皿で完結、さっと食べておしまいにできる。

昨今のフランス人は、従来のように昼食にたっぷり2時間かけるのではなく、安くてさっと食べられて満足いくものを好むと聞き及びますから、そのあたりにバーガー台頭の理由があるのかなあ・・
と、牛挽き肉買うのに肉屋で並びながらつらつら考えました。

うちの二匹もバーガーに目がなく、ハムバターサンドがお昼ごはんと聞こえてくるや言語道断と考えるクチです。


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通りがかりにパチリ。この季節はセーヌ河の水面が上がります。

前菜は、野菜ポタージュ
主菜は、シュークルート(豚および仔牛のフランクフルトソーセージ・キャベツの酢漬け)、残りじゃがいものグラチネ、いんげん塩茹で


立ち呑み日記・ビッグマック [ランチ]

午前中いっぱい出かける用があったので、ワルガキ二匹のお昼にビッグマックを買ってきました。うちは学校の目と鼻の先なので、お昼はいったん帰って食べるんです。

ビロロ、ピロ、ピロ、ピロ、ピロ・・と、インターフォンを何度もシツッコク鳴らすのは、11歳のムスコ。

「ビッグマック買って来たわよ」
と、開錠しながらインターフォン越しに告げるや、さあ、もんどり打って階段かけのぼって来るのが伝わって来ます。

「手作りハンバーガーよ」でも「カレーうどんよ」でも、ここまで目の色かえません。ビッグマックの威力たるや、スゴイ。

手作りハンバーガーだって捨てたもんじゃないンですヨ、今さっき肉屋で挽いてもらった牛肉を、熱くしておいたフライパンで両面さっと焼いてはさむわけですからね。

が、「やった!」と、にぎりこぶし突き出して喜びはしても、あそこまで慌てないです。

それどころか、熱いところを食べさせようと台所とテーブルを必死に行き来してるのを尻目に、iPADのゲームからすぐには離れなかったり、する。

オカーサン手作りのゴハンは逃げない、と、思いこんでるみたいです。

そこいくとビッグマックは、「逃げる」。テイクアウトの温かい食べ物は今すぐ食べるからこそ美味しいわけですもんネ。

♪おーいしくてー、なりふりかまっちゃ、いられないー・・
という歌を、ビッグマックというとワタシなど思い出します。

1980年代中ごろのCMで、きゃしゃで小柄ながらしんの強そうな若い女性が、口の端についたソースを手の甲でぬぐいながら夢中でビッグマックにかぶりつく。

「女のコだってああやって食べてカッコいいんだ・・」
と、思わせたCMだったのではないでしょうか。

ビッグマックといったらボリュームたっぷりの男の食べ物で、当時の女のコは「カワイコぶりっこ」でしたから、人前で大口あけて平らげるなど
「ありえなーい」
と、いうことになってました(家では当然やる)。

この直後、男女雇用機会均等法が施行され、日本経済も頂点へ向かって上昇し、カワイコぶりっこを返上したワタシらがオヤジギャルとなったあかつきに、ビッグマックとなじんだでしょうか・・

・・マ、食べる機会はありましたが、格別親しんだとも言えない気がします。

ワタシらにはホレ、ティラミスやらイタメシやらガード下の焼き鳥やら、他に血道をあげるべきものがたくさんあった。

男性陣はいかがですか? つゆだくの牛丼やらネタのいい回転寿司やら、やはりいろいろだったのではないでしょうか・・

・・そういう結果が、今日の日本のマクドナルドの不振につながってしまった、の、かも、しれない。

フランスのマクドナルドは追い風だそうです。ビッグマックはもとより、フランス産銘柄肉などを使った国内限定メニューが大当たり。

「急いで手ェ洗うよ」
と、息せき切って飛び込んできたムスコに続き、ピロロロロ・・と、インターフォン長押しが響きました。今度は13歳のムスメです。

「ビッグマッ」
ク、までこちらがインターフォン越しに言う前に状況を察したらしく、おッそろしいどたどた走りが聞こえてきました。


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夕方になってようやく雨が上がりました。

前菜は、ニンジン千切りサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、カリフラワーとベシャメルソース、グリーンサラダ

立ち呑み日記・目玉焼きのっけ [ランチ]

本日、お昼ごはんのしたくをしながら、実に深淵な事象に気づきました。

エート本日のお昼ごはんはといいますと、半切りアボカド、目玉焼きをのせたソース焼きそばに塩茹でインゲンです。うちは学校が目と鼻の先なので、ワルガキ二匹がいったんお昼に帰ってきて食べるんです。

で、深淵な事象とは何かといいますと、目玉焼きなんですね。「目玉焼きがのっかるとB級度が増す」

卵といったらその昔は高級食材、今日だっておかずが一品増えるのと同じなわけでむしろ豪華感が増したっていいのに、いったいこれはどうしたことか。

残り物で作った肉無しカレーライスに目玉焼きをのっけたときもそうでした。すごーく美味しそう(じっさい半熟の黄身と混じったところがことさらにヨロシかった)な、見た目なのに、高級感からどんどん遠のいて行く。

お好み焼きなんかもそうではないでしょうか。あと、こないだのお昼にブロッコリーを添えたチーズ和えマカロニに目玉焼きをのっけたんですが、やはり一気にB級へと滑落しました。

目玉焼き単体がちっともB級でないのはみなさまご周知のところ。むしろ特A級です。

ちょっと想像してみてくださいナ・・

・・星がいつくもついたホテルに宿泊する幸甚を得たとする。コンチネンタルの朝食付きとしましょうか。

部屋に置いてある「ご宿泊のしおり」を開くと、ドアノブにかけておく朝食ルームサービス用の札が挟まっています。

コンチネンタルは、コーヒー・紅茶・ココアあたりからひとつ、オレンジジュース・トマトジュース・グレープフルーツジュースあたりからひとつ選んでいい。

この札をひっくり返してみると、アメリカンブレックファストの別料金メニューになっているんですね。

目玉焼き(1200円)
なんて、うやうやしい選択肢があるわけです。

ではせっかくの高級ホテル滞在ですから、本日は思い切って、目玉焼き、注文しちゃいましょうか。黄味の焼き具合は、半熟を選ばさせていただきます。

以上を記してドアノブにかけておくと、朝、お願いした時間に黒服さんがしずしずと、車輪つきテーブルごと部屋に運んで来てくれます。

白いお皿の上で湯気を上げている目玉焼きのなんと神々しいこと。

このお皿に乗っているのは、キッパリ目玉焼きのみ。千切りキャベツやらポテサラやらミカンの一、二ふさやらのつけ合わせの一ッ切ない、そっけないまで単体の目玉焼きです。

また、だからこその風格が、あるんですね。

しかしこれが同じ姿のまま家庭に入ってきたらどうでしょう。普段使いのお皿に、キッパリ目玉焼き焼きのみ。

(トマトなりキュウリなり何かしらつけ合わせないかしら)
と、冷蔵庫をあさることになります。

「目玉焼きだけがいい」
と、目玉焼きに目がないうちのワルガキなどは、焼きそばもカレーも「のっけ」をさほど喜びません。
「別のお皿にして、目玉焼きだけもっと、4こか5こ食べたい」

「だめです」
と、オカーサン(ワタシです)。「タンパク質と緑黄色野菜と炭水化物のバランスよく食べます」

かくしておかずに肉魚がちょっと足りないナという時に、うちは目玉焼きのっけとなるワケです。


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ふと見上げたら、空中自転車。パリは自転車人口増えてますが、留める場所は確かにむずかしいです。盗まれる可能性も高いし。

前菜は、なんちゃってワカモーレ(アボカドとさいの目トマトとレモン汁のペースト)、トマトサラダ
主菜は、牛挽き肉ステーキ、小カボチャのオーブン焼き、いんげん塩茹で

立ち呑み日記・ケバブと牛丼 [ランチ]

お昼にケバブが
「食べたいったら食べたいッ」
と、13歳のムスメが盛んに示威行動を繰り広げるので、みとめましょう、と、買いに出ました。

近所のケバブ屋さんは大繁盛でした。着席してフォークを動かしているのは全員男性、それも褐色の肌のトルコ人男性ばかりです。

これって、パリの日本人がこぞってラーメンに向かうのと同じでしょうかネ。

よくテレビのラーメン屋さん特集なんかで、眉間にシワ寄せて味わっている男性(そう、きまって男性)が登場しますが、このケバブ屋さんでそういうトルコ人は見かけません。

みなさんホッコリした表情でお昼をたのしんでおられる。

そういうところからいくと、それに男どうし連れ立って食べに行くところからかんがみても、ラーメン屋よりむしろ牛丼屋のほうに共通点があるかもしれません(パリには残念ながら牛丼専門店はありませぬ)。

牛丼屋にはホレ、「つゆだく」とか、専門用語を用いた注文がありますよね、ケバブ屋さんもそうです。

まずパンですが、ホットドック用みたいな長細いのと円形のピタパンがあり、カウンター内の調理人と目が合うや、どっちにするか光の速さで注文するんですヨ。

光の速さで、というのは、ケバブ調理人は長細いほうを音速で取り上げ調理にかかろうとするから。トルコ本国のケバブが細長いパンが主流、なの、かも、しれません。

パリでケバブは長らく「ギリシャ風サンドイッチ」と呼ばれ、円形のピタパン一辺倒でした。

ムスメもまた人生お初で「おいしーい」となったケバブがそれだったので、
「ピタパンのほうで」

ここにソースをぬるんですが、
「どれにする? さあ、さあ!!」
と訊ねられる切迫感といったらないです。

モタモタすンな、
と、お店の人は間違っても口に出さないものの、:ケバブが
どういう食べ物かあらかじめ知っといてもらいたいな、
というオーラはげしく立ち込めている。

安い、はやい、うまいの牛丼屋だって、「並」とか、「アタマの大盛り」とか、注文する側もすばやさを求められているのではないでしょうか(「アタマの大盛り」とは具のみ多く、という符牒だそうです)。

ケバブをたまにしか買わない日本人のオカーサン(ワタシです)は、焦りに焦りながら、ソースはマヨネーズを選択。

「ソースたっぷりね」
と、ワタシの前に注文していた男性がつけ加えてましたが、これなど「つゆだく」に匹敵でありましょう。

そのあとパンに細切れ生野菜をのせるんですが、身を乗り出して、
「玉ネギの薄切りはなしでおねがいね」

なにぶんにも13歳の嗜好ですからね。

しかるのちにそぎ肉がたんまり載ったところを春巻き状に丸め、揚げたてフライドポテトも脇におテンコ盛りにしたところで、
「ケチャップ? マヨネーズ?」

フライドポテトに何を、とのことなんですが、聞いてくれながらも手がすでにマヨネーズのびんにかかっているのを制し、
「何も添えなくていいです」

これで一人前5ユーロ(約700円)、大人の男性がオナカイッパイのイッパイになる量です。

お財布を開いていると背後に、男子高校生のグループがお腹空かせきった顔して並びました。


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バスの中でパチリ。今日は寒かったです。

前菜は、カボチャのスープ
主菜は、牛と豚二種類のフランクフルトソーセージ、シュークルート(キャベツ酢漬け)、蒸しじゃがいも、いんげん塩茹で