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立ち呑み日記・小松菜 [主菜]

「コマツナ」
と、いつも行くマルシェに最近出店始めた農家直営屋台をのぞきこんだら葉モノを指さして言うので、ヘーエとなりました。

「小松菜?」
と、おうむ返しに、とはいえフランス語風に唇を大きく動かして一文字ずつハッキリ発音するのではない純然たる日本語の、わが生まれ育った東京近郊風アクセントで聞いてみれば、
「ウィ、コマツナ」

小松菜なんて久しぶり。だいいちパリの街角で出合うなど、四半世紀住んでますが初めてです。

小松菜、関東一円の方なら昔ッからおなじみですよネ。お正月のお雑煮にも必要不可欠です。東京江戸川区小松川で栽培が始まったところから、小松菜。

ただ、あまりに身近過ぎて、その存在やありがたみをつい軽んじちゃうキライがあるんですよねえ・・

「ほうれん草のおひたし」と「小松菜のおひたし」、
とこう並べるとわかりますが、ほうれん草のほうがより国民的存在感がある(ような気がする)。

クックパッドをひもとくと、ほうれん草のおひたしは2000レシピ、小松菜のほうはその半分の1000レシピ、やはり水をあけられています。

ほうれん草のほうが鉄分多いですしね。でもカルシウムは小松菜のほうが多いです。

「小松菜をせっせと食べましょう」
日本の妊娠出産本にも書かれてました。

(そういや小松菜食べたいナ)
と、ワタシも妊娠中、日本から取り寄せたところを読みながら、おひたしやお雑煮のおつゆにチラリと思いを馳せました。

「チラリと」というのがミソで、あまりにも昔からの馴染みなのでチト軽視し、強くは求めなかった。

食べると美味しいんですヨ。小松菜にはほうれん草の土っぽさとは違う、青っぽい風味があります。

何十年来パリに住んでいる知り合いの高齢日本婦人が開腹手術を東京で受けるため一時帰国して入院した折、病院食が万事和風だったのが
「めずらしかったワァ」
と、パリに戻ってからも興奮さめやらずだったことを思い出しました。

入院初日のすぐの食事におひたしが、それもパリの自宅で茹でるほうれん草と見た目は同じながら風味も食感も違い、でも明らかに遠い昔になじんだ記憶のある青菜というので、
「これ何かしら、おいしゅうございますわね」
と、隣りのベッドで身を起こしている、自分と同年輩のご婦人にウキウキ話しかけた。

「小松菜がそんなにおめずらしいんですの?」
と、お隣りからぎょっとした声が返って来たそうな。

かように、海外生活の中で小松菜は普段忘れ去られているんですね。

しかし今日は、小松菜がその存在を示威してきたんです。これはぜひとも手に入れなければ。

日本で見かけるのとやや異なり、葉が深緑色でぶ厚いのはイル・ド・フランスの土のせいなのか、はたまた小松菜をよく知らぬ農家の方の育て過ぎか。

「カラシナと混ぜます?」
と、聞かれたのにもびっくりしました。

日本でからし菜と小松菜の混合料理などそうないと思うんですが、パリではいずれ馴染み薄ということで抱き合わせで売ることにしたそうです。

デワデワ懐かしい小松菜。

ナムルにしましたらもう、もう、とおってもヨロシく、あっという間になくなりました。


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はっ。またしても写真とり忘れた。大急ぎで窓からパチリ。奥の光はノートルダム寺院です。

前菜は、アボカド・レモンで
主菜は、輪切りにんじんのたっぷり入った牛肉の赤ワイン煮、千切りじゃがいものお焼き、マーシュサラダ


立ち呑み日記・賄(まかな)い [主菜]

夕方5時、11歳のムスコの習い事を待つ間に行くカフェの、これまたいつものひっそりした奥の席についたら、目の前のカウンターで白い上っ張りの料理人さんが賄(まかな)いを食べ始めたところでした。

ひと皿盛り合わせで、鶏ももローストにフライドポテトの小山と、全体にかぶさるレタス連峰。実にてきぱきとしたナイフさばきで食事をおすすめです。

アアなんと美味しそうなこと。

賄いってどうしてこう心惹かれるんだか。部外者には食べる術(すべ)がないからでしょうか。

ワタシなど時分どきを前に食べ物屋の前を通りがかってお店の人がお客然と席に着いているのが目に入ったら、もう条件反射に得意の横目でしッかと確認しちゃいます。

(どれどれ、賄いはなにかナ)

カフェの場合はたいていメニューの料理の流用です。カフェの料理といえば肉料理とたっぷりのじゃがいも、ないしはソースをからめたサーモンや白身魚とライス、テナ具合。

時分どきに一般のお客さんが食べているのと寸分たがわぬはずなのに、それよりさらに美味しそうに見えるのは本ッ当にどうしてなんだか。

あれでしょうかネ、十二分に腹ごしらえして肉体の労働に精を出した後にのみ味わえる「うまさ」や「充足感」の予感がまた伝わって来るんでしょうか・・

・・とこう書いていて思い出しましたが、ワタシにも賄いを食べた日々が、そういえばあったんですヨ。

学生時代、友だちに誘われて今はなき赤坂プリンスホテルのレストラン部でアルバイトをしたことが、短期間でしたがあるんです。

仕事は、支給された従業員服に着替え、これも支給の食券携えて社員食堂で定食に向かうところから始まりました。

「食べるのも仕事のうちなの?」
と、瞠目したもンです。

とはいえ夜のシフトだと夕方4時半ごろの出社でうちの晩ごはんの時間よりずうっと早く、お腹は別にすいてない。

「それでもちゃんと食べてください」
と、担当責任者から念を押されました。

マ、若いですから、おなかすいていようがいまいが目の前においしそうなおテンコ盛りがあれば右から左に平然と平らげられるわけですが。

しっかり食べておかないと仕事のたてこむ時分どきにヘパッてつかいものにならくなる、と、アルバイトを采配する責任者はわかっていた。

と、いいますか、それが飲食業の基本なのでありましょう。

ちっともおなかすいてないのに平らげたっていうのに、この時の社員食堂の日替わり定食が
「美味しかったナー」
と、30年もたってしみじみ思えるくらい、美味しかったんです。

ただし、定食の内容は忘却の彼方。

「美味しかったナー」
という感覚のみが残っているんですね。

仕事は、ワタシらアルバイトも制服姿ではありますが社員や研修を受けた契約社員ではないのでお客様の前に姿は出せず、厨房からホールまでの長い廊下を料理のお盆を持ってひたすら行き来します。

この間先ほどの満腹がこなれていくる中で、
(さっき食べた定食美味しかったナー)と、
曲がりなりにもこの自分がちゃんと仕事してるんダという充足感から記憶にしかと刻まれたのだと思います。


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はっ。写真撮り忘れてた。大急ぎで窓からパチリ。この直後に雨が降り出しました。

前菜は、ラデイッシュ、バターと塩で(ちぎったバゲットにのせて齧るととおってもヨロシイです)
主菜は、鶏ローストとじゃがいも(の残り)とベシャメルソース(の残り)とねじりマカロニのグラチネ(チーズ焼き)、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・生のあんきも [主菜]

魚屋の前を通りがかったら、オヤ、なんとなんと、鮟肝(あんきも)が、ある。

生、ですゾ。この魚屋で、初めて見かけました。にぎりこぶしを二つくっつけたぐらいの大きさで、肌色のなかに気まぐれな感じに淡桃色をさっと刷(は)いた、ぽってりあでやかなお姿。

ヘーエ、こんなの売ってるのネ、と、右から左から子細に眺めましたね。鮟肝は細かい氷の上に乗せられた笊(ざる)に、ぽってりといくつものっています。

パリの魚屋で鮟鱇(あんこう)は高級魚として上座に並べられていますが、ふつうはシッポのほうの身ばかりなんですヨ。

以前はごくたまーのたまーに、マルシェの魚屋の客寄せに、アンテナ立てた鮟鱇の吊るし切りを見かけたものですが、それだってかれこれ20年以上前のことで、最近はとんと見かけません。

「鮟鱇の顔なんて拝んだことないよ」
と、魚屋のお兄さんも言っていたものです。

卸売市場で仕入れる時にはもう、鮟鱇はシッポの近くで切られた例の姿になっているのだそうな。あのすざまじいお顔のあたりはどこへやられるのか。

(日本じゃないのかな)
と、ふんだんですが、どうでしょうか・・

・・検索してみたところ、日本は茨城県や山口県の下関で水揚げされていて、欧州から輸入するまでもないみたいです。

あんこう鍋といったら有名ですよネ、あと、唐揚げや、身と肝を味噌などとともに和えた「とも和え」などにするそうですが(どれとっても食べたことありませぬ)。

さて生の鮟肝、どうやって食べればいいんでしょうか。あんきもの作り方は検索したらたちどころにわかりました。

全体に塩をふって二十分ほど置いたところをアルミ箔で巻きずしのように棒状に巻き蒸し器で蒸す。以上。

なんだかどうも、意外なほどカンタンです。

天下の珍味あんきもといったら職人技の、道場六三郎みたいな和食の名料理人にしかつくれないものだとばっかり思ってました。

「フランスではどうやって食べるの?」
と、魚屋のお兄さんに聞いてみると、
「ソテーだね、仔牛レバーなんかより淡泊でうまいよ」

フランスで肝(きも)といったら鶏レバーや仔牛レバー、格安なれど味がうんと落ちる牝牛レバーがよく食べられています。

豚レバーは、パリは豚肉を禁忌とする宗教の人々もたくさん住んでいるところから肉屋の売れ筋とはいえず、めったに仕入れないものだそうです(地方によっては売れ筋です)。

魚のほうは、タラの肝の油漬け缶詰がスーパーで安く買え、おつまみにとおってもヨロシイんですヨ。

しかし今日は、なんといっても生のあんきもが目の前にある。しかもキロ10ユーロ(1300円)というんですからお買い得です。鮟鱇の尻尾の方の身の半額以下。

自分のためによーく選ってひとつ買いこみました(うちの家族一同レバーには冷淡なのでひとつのみ)。

日本風のあんきもに蒸してみようかなー、
とも思いましたけど、魚屋のお兄さんのおすすめのソテーにして、アジア食材店で買ったミツカンポン酢をかけてみたら、これがもう、もう、今思い出してもうっとりするくらい、白ワインがすすんじゃうお味でございました。


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オペラ座の背後で信号を待ちながらパチリ(左の建物です)。


前菜は、ビーツ(赤かぶ)とリンゴのサラダ
主菜は、鶏ロースト、じゃがいもロースト、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・1000とんで6本 [主菜]

晩ごはんに生サーモンの切り身を買ったので、冷蔵庫の野菜室に後生大事と寝かせてあった細身大根をつまにすることにしました。

生サーモンは切り身のままカワを下にフライパンの強火で炙り、ステーキと同じく各自がお皿でナイフを入れることにします。

カワがこうばしくカリカリになって美味しいんですヨ。

細身大根は、いつもいくマルシェに出ている農家の屋台の研究熱心なご主人が日本産の種で育てたそうで、アジア食材店で手に入る大根より格段に汁気が多く日本の青首大根と寸分たがわぬ味・・

・・と、いうのが「後生大事」となっちゃうトコなんですね、あだやおろそかに食したらイケナイ心境となる。

「後生大事」のせいで、ある日はっと気づくと賞味期限がとうの昔に過ぎて干からびて見るかげもなくなっている・・
というのをこれまで何度繰り返したことか。

日本からのおみやげのミョウガやシソの大葉も同じ轍(てつ)を踏んでます(涙)。

今回野菜室の底から取り出してみれば、久しく見ないうちに髭がずいぶん生えてましたが、カワ剥いたらダイジョブそうです。

フードカッターでジャッとやればたちまちに千切りになりますが、さらにここでまた「後生大事」の気持ちがはたらき、包丁で丁寧に切るほうが
(よりおいしいに違いない)
と、思い立ちました。

フードカッターだと汁気も同時に出ちゃって、そうすると、惜しい。

そこで1000とんで6本に切ろうと、まな板の上で細い円柱の大根をアッチ向けたりコッチ向けたりします。

(そういやなんで千『六本』なんだろうナ)
と、ふと思ったので、いったん包丁を置いて検索してみると、千切りと千六本は別モノだったと初めて知りました。

千六本のほうが六本多いっていうのに、千切りの方がもっとうんと細かい。

千六本は、「せろっぽん」と読み、古代中国語の「繊羅葡(せんろふ・細切り大根のこと)から、「千六本」と当て字にしたのだそうです。

して千六本の切りかたは、フランス語でいうところの「アリュメット(マッチ棒)」。

ワタシなど子どものころ、朝のおみおつけの実といえば大根の千六本が一番好きでした。味が芯までしみ込んだ細い大根を箸で拾い上げるうれしさ。

フーフーして口に運ぶと、歯の間で難なくポクリと折れます。

「冷めた大根のおみおつけの大根だけ引き上げて熱いご飯にのっけて食べるのが好き」
と言っていた友人が、そういえばいました。

よーく味が沁みてポクリと折れるのがご飯と口中で渾然一体となるのが
「たまらないんだ」

「ポクリ」には細すぎてはだめで、マッチ棒ほどはないと成り立ちません。

マッチ棒大といえば、ポテトチップの粉末をまぶした大根サラダをおしえてもらって試してみたら、これがお酒のおつまみに最適でした。

今日も、半分は主菜のツマにしても、半分はポテチサラダにしようかナ・・

・・と、改めて包丁をとったんですが、野菜室で長く寝かせたのがたたってあろうことか中がスカスカで細切りは困難。

仕方なく短冊切りでお茶を濁しましたが、短冊と千六本では、同じ大根でも味が違ってくるものですネ。


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歯医者が終わって「はあー」とひと息つきながらパチリ。ここはリヴォリ通りといって18、19世紀には建物の下がアーケード付き目抜き通りだったところです。

前菜は、トマトとゆで卵のサラダ
主菜は、サーモンのたたき風、大根の短冊、ニンニク風味じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で、

立ち呑み日記・ブロシェット [主菜]

「ブロシェット」が
「食べたい、食べたい、食べたい」
と、10歳のムスコ。

「ブロシェット」は、串焼きです。

なんでまた、と、オカーサン(ワタシです)は訝(いぶか)りました。

「ブロシェット」とこう言われると、なんといいますか、見栄えはいいもののパサパサした粗末な食べ物、テナ思い込みが、ワタシにはあるんですね。

なぜというに、ワタシの学生時代、パリの学生街を席巻していたギリシャ料理店こそが「ブロシェット」の本拠地みたいなもので、どの店のショーケースにもまだ焼いてないところがずらららーっと並んでいた。

とぐろに巻いた羊肉ソーセージだの赤ピーマンだの、海老だの、一見いかにも新鮮でおいしそうです。が、食べるとややガックシ。焼きすぎのパッサパサです。

今日では、この世代のギリシャ移民の引退とともに、あれだけあったこのテのギリシャ料理店はもののみごとに絶滅してしまいました。

「ブロシェット」は串ざし全般のことですから、なにもすべてがすべてパッサパサというわけではないんですが。

現に、うちの近所のパン屋兼お菓子屋にはひと口大に切ったミルフィーユなどのお菓子と真っ赤なイチゴを交互に串に刺したのが「ブロシェット」として売られています。

その美味しそうなこと。矛盾してますが、串にささってるだけで、どうしてこんなに食べてみたくなるんだか。

ちび太のおでんだって単体でなく串にささっていたからこそ、後に商品化されるまでになったんじゃ、ないでしょうか。

さて、ムスコがなぜ急に「ブロシェット」と言い出したかというと、なかよしのマチスくんが家族で食べに行ってとおっても美味しかったと微に入り細に入り聞かされたようなんです。

マチスくん一家は、土曜日の午後、郊外の巨大ショッピングセンターへ自家用車で行った。

うちは車がないので疎いんですが、車を持つパリ市民もまた田園生活者に同じく、日々の買い物を近くのスーパーやマルシェではなく、郊外のこういう巨大施設でまとめ買いするものだそうです。

そのほうが格段に割安ですからね。で、出かければ「何か食べて帰りましょう」ということに、なる。マチスくん一家が週末に車でよく行くところには、スシと「ブロシェット」食べ放題の店があるのだそうな・・

・・その「ブロシェット」とは、ヤキトリでありましょう。

パリでは1990年代後半から、中国人の経営する日本料理店が雨後のタケノコのごとく増えたんですが、こういう店はきまって、前菜がスシ、主菜がヤキトリです。薄切り牛肉のチーズ巻き串焼き、なんてのも、こういう店の定番。

ウン、言われてみれば、焼き鳥、食べたいなあ・・

この夏一時帰国した折に友人たちと行った居酒屋で食べたッきりだなあ・・

そこで、「WASABI」というテイクアウトの店まで行って、つくねやらをついついたくさん買いこんじゃいました。

お味はというと、決してまずくないですが、日本の焼き鳥とは、何かが微妙にやや違う、ような、気がしないでもない。

「ブロシェット・ジャポネーズ」
と、言われると、大いにナットクしたくなる、そんな味です。


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散歩しながらパチリ。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、鶏肉中華炒め、炒飯、いんげん塩茹で、グリーンサラダ




立ち呑み日記・ウリカボチャ [主菜]

世の男性のみなさまにお聞きしたい。

みなさまはなぜ、カボチャがお嫌いなのか。

「男性の」と言いましたけど、13歳になるうちのムスメもまた
「おねがい、お皿の食べなくていいでしょ」
と、懇願する始末(うちはお皿のものは残さず食べる約束です)。

日本のカボチャよりねっとりして、うっすら甘いです。

「カレーかけちゃえばなんとかのみこめるよ」
というオトーサン(ワタシのオットです)ともども、10歳のムスコもまた味と食感わからなくしてのみこんでるありさま。

カレーは味消すために食卓に出てるわけではありませんッ(怒)。

「それ、キロいくらだった?」
と、巨大なウリカボチャをマルシェの農家直売の屋台で買ってからアジア食材店に入ったところ、お店のベトナム人のご主人に目くばせされました。
「うちの日本風カボチャ買えばいいのに」

「ただね」
と、ご主人は顔をしかめます。「野菜としてはキライだけどね」

ご主人は日本料理大好きで、日本人街の讃岐うどんの店へも地下鉄乗り継いで足を運ぶそうで、こういう店の天ぷらセットにはきまってかぼちゃの天ぷらがついてくるものだそうです。

これを初めて口に入れた時、「うえー」となったそう。

甘くてもっさりしてノド詰まりそうってのに、
「日本人はなんでまたカボチャをこんなふうにして食べるんだか」

カボチャは、茹でてタピオカと合わせ、ココナツミルクをかけまわしたデザートなら、
「大、大、大の大好き」

肌色の巨大なウリカボチャ、実はワタシ初めて買ってみたんです。

マルシェの農家直売の屋台に、秋口に入ったら、長細く(とはいっても太い)、これまた別の巨大な瓜が山と積まれていたんですね。

ハロウィーン飾りにする巨大カボチャと同じ味でスープ用、
と、おかみさんがおしえてくれたので、エッチラ担いで帰りました。

うちの家族はカボチャのスープといったら目がないんです。だからこそ、この見慣れない肌色のウリカボチャにもとびついたわけですヨ。

「『バターナット・スクウォッシュ』という名前だよ」
と、そのずっしりしたところを持ち上げながらご主人。「スープには不向き」

「シーシーシー」
と、列の背後にいた紳士が人差し指を上げました。シーsiはフランス語の否定文に対して肯定するときの言い方です。
「ねっとり、ビロードの舌触りだよ」

「マ、好きというならね」
と、ご主人はお客をたてながらも、肩をすくめます。
「それよりね、グラタンがうまいのよ」

スープにする要領で皮剥いて種をとり、大まかに切り分けたのを鍋に入れてうっすら水をはって蒸し煮にすると、ぐずぐずくずれる。これをおろしチーズと層に重ねて耐熱皿にのせ、上からもおろしチーズをどっさりかけて、焼く。

どうです、いかにも美味しそうではありませんか。

そこでスープ用のと合わせ特大二つを渾身の力で担ぎ、アジア食材店の用までたして、エレベーター無し最上階の我が家まで、どうにかこうにか帰り着いたわけですヨ。

結果的に、一方(スープにするほう)は溺愛され、一方は悪しざまにされることと、なった。

この違いは何なのか。

世の男性のみなさま、カボチャ嫌いのみなさま、おしえてちょーだいッ。


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秋めきました。

前菜は、トマトサラダ
主菜は、焼き鳥(テイクアウト中華)、いんげん塩茹で、残りのカボチャのグラタン



立ち呑み日記・ヌュゲット [主菜]

ヌュゲットが、
「久しぶりに食べたい、食べたい、食べたいッ」
と、この9月に中学に上がった10歳のムスコ(フランスの学制は日本の6・3・3制と異なり5・4・3年制なんです)。

ヌュゲットとはフランス語で、ナゲット、ムスコの小学校給食の人気メニューでした。

ムスコが小学校低学年の頃、日本語学校が終わったおやつどきの胃袋をかかえバスの中で
「ヌュゲットぐらいおいしい給食はない」
と、声高に自己主張していたら、前の席の紳士が(おや?)という顔で話しかけてきたことがありました。

「そんなにおいしいのかい?」

大人からすれば安価なファストフードで、何が練りこまれてるんだか分かったもんじゃない、テナ疑念もあるのがナゲットです。

エートね、丸みたいな四角みたいなかたちで、はンッとかじるとすごーくおいしくて・・と、ムスコの説明は要領を得ません。

が、紳士はいたく心をつかまれたようでした。ヌュゲット、と、紳士は自ら発音しながら、手帳に書きこんでさえいました。

尋ねてみれば紳士は作家にして詩人なのだそう。

どうです、安価だ疑念だとあなどるなかれ、文学的インスピレーションを呼び起こすまでなんです。

かくなるナゲット、うちは中学校が目と鼻の先でムスコはお昼にいったん帰って食べることとなり、給食から遠のくことになりました。

食べ盛りの給食でナゲットとなれば、一皿にいくつぐらいのるものなんだか。いくつ食べたってオナカイッパイには程遠い気が、しないでもないですが。

うちは昨日、晩ごはんが七面鳥ささ身のフライで、一枚余分に買ったのが冷蔵庫にあったんですね。

よろしい、ナゲットを、ではいっちょ作ってみましょうか。これまで一度も作ったことないんですが、なに、ミンチを卵でつなぎコロモはたいて揚げれば何とかなるんじゃないでしょうか。

NHK「今日の料理」でも観たことあります。

たねをひと口大に成形するときに、
「形をいびつにすると、より感じがでます」

まずはささ身をミキサーでガーッとやるんですが、いきなり難題が出現。家禽肉って粘るんですネ。そぎ身一枚分全部がミキサーの側面へベッタリ貼りついちゃった。

ナゲットはある程度の量をつくらないとダメみたいです。

こそげると、小鉢ほんの一杯分になりました。これに卵一個はいくらなんでも多すぎるナ、とも思いましたけど、溶き卵半分ポッチ冷蔵庫に残っても邪魔なので、ええい全部入れちゃえ・・

・・すると当然のごとく、水気多くずッくずくのビッタビタ。ここからいびつな形に成形するのは至難の業です。

でも、塩して乾燥エシャロットなどもパラパラしてさらにぐるぐるしているうちに鶏肉が卵を吸い、もったり、というまでになってきました。

小皿に小麦粉を積もらせ、ここへスプーンですくってポタリ。上から小麦粉パラパラ。しかるのちに熱した油へ次々落としていくとたちまち出来上がりです。

軽やかなスナックで、なかなかヨロシイ。

が、何もわざわざ額に汗してミンチになどせず、ひと口大のささ身にコロモつけて揚げるだけで十分おいしいんじゃないかなあ、とも、思いました。


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歩きながらパチリ。降り出さなくてよかったデス。

前菜は、カボチャポタージュ、自家製ナゲット
主菜は、シュークルート(ユダヤ式牛肉フランクフルト、千切り発酵キャベツ)、蒸しじゃがいも、いんげん塩茹で、グリーンサラダ


立ち呑み日記・スカペーチェ [主菜]

ズッキーニのスカベーチェ、というイタリア料理を、友人におしえてもらいました。彼女は夫ぎみがイタリア人であられます。

イタリアはナポリの家庭料理で、薄切りズッキーニを油で揚げたそばから熱いうちにお酢やミントの葉をかけまわし、あら熱をとってさらに冷蔵庫で2時間ほど寝かせて、出来上がり。

スカペーチェとは「マリネ」のことだそうです。

ワインのお供に最適で、
「前もって作り置きできるところがイイ」
とのことなんですが、
(イタリア人って忍耐づよいなあ)
と、つくづく感心せずにいられません。

だって、油でこんがり揚がったアッツアツのカリッカリが目の前にあるんですぞ。

(せっかくだから熱いうちに塩ふってつまんじゃおう)
となるのが世の常、と、思い込んでました。

マンマが台所でジャーッと揚げているところへしのびこんで、隙を見て揚げたてをつまみ食いしようとは思わないんでしょうか。

うちなんかフライドポテトを揚げている気配に気づくと、ワルガキ二匹、だけでなくオトーサン(ワタシのオットです)まで用あり顔で台所へやって来て、隙あらば金網の上の揚げたてに手を伸ばします。

「スカベーチェ」は、ここからもうひと段階調理があるわけですね。

たまたま時を同じくして、おとといの晩、うちもズッキーニの蒸し焼きがつけ合わせでした。耐熱紙を敷いたフライパンに薄切りを敷きつめ、焦げ目がしっかりついたところで乾燥エシャロットぱっぱっ、次いでニンニクをパァーッとしぼってみました。

ズッキーニがエシャロットとニンニクのエキスを吸ってなかなかヨロシく仕上がりました。

そして翌日、残りを小皿で冷蔵庫に入れておいたのをお昼に出してきて、チンする手間を億劫がってそのままぱくっといたんですね。

そしたらまあ、意外なほどヨロシかったんですヨ、前夜のアッツアツよりいいくらい。これこそが、かの「スカペーチェ」だったんです。

素材が熱いところへ調味料や薬味をふりかけゆーっくり冷めていく間に味をしみこませていく、という調理法で、揚げ魚の南蛮漬けなんかがまさに「スカペーチェ」。日本料理では、カリフラワーなど野菜の煮びたしがその仲間です。

煮びたしはまあ、アッツアツのおつゆに野菜をほうり込んですぐさま引き上げる気にはなれず、やはりしばし待って味をしみこませたいです。

が、魚の南蛮漬けはどうでしょう。

せっかくカラッと揚がってることだし、できれば大根おろしとおしょうゆぐらいでアッツアツと対峙(たいじ)したいという欲望を押さえつけ甘酢に浸して待つというのは、これでなかなか決断力が要ります(と思う)。

しかし南蛮漬けってオイシイですよネ。

ズッキーニのスカペーチェもまた、よーく味がしみていて歯につめたくてさわやかで、これからの季節にぴったり。

これからはぜひともスカペーチェと親しんでいくつもりでありますが、その前段階のアッツアツもまた大いに捨てがたく、さながら若い男とその父親両方をたらしこむいきおいで両刀でやっていく所存であります(って例が不適切かもナ。第一そんな経験ないしナ)。


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オオ咲いた咲いた。

前菜は、アボカド、レモンで
主菜は、フォーフィレ(牛ステーキ)グリル、じやがいもグリル、いんげん塩茹で、グリーンサラダ

立ち呑み日記・にんじん [主菜]

牛肉の赤ワイン煮に入れるのにニンジンを輪切りにしながら、つらつら考えた。ニンジンって、ワタシらが子どものころは嫌われ野菜の代名詞だったもンだけどナ。

♪きらいな~のあーかいニンジン・・
と、「黒ネコのタンゴ」のB面でも歌われたものですが。

今の子どもはどうなんでしょうネ。

うちのワルガキ二匹は前菜のニンジン千切りサラダに目がなく、主菜のつけ合わせで短冊の茹でたなりにも
オリーブオイルをかけることも時にありますが、ふつうはそのままでぱくぱくいきます。

ワタシらは、なぜあんなにも忌み嫌ったのか。

「ニンジン大好き」
と、ワタシなど言いふらしたくらいでした。

幼稚園で食べ物の好き嫌いのはなしになってほかの子から一歩ぬきんでようとそんなホラ吹いたんだと思います。

言った以上は後ろめたいので積極的に食べてみた。

すると、独特のニオイがやや鼻にまわるもののこっくりしたあまからの味つけによく合い、自らの発言に改めて納得したもンでした。

そうそう、あのころニンジン料理の代表格といったらなんといってもあまからのお煮しめ。

うちは母が津軽生まれで、千切りニンジンと下北の海で獲れるムツの魚卵をあまからに煮込んだものがワタシなど大好きでした(今も大好き)。

花咲いたような魚卵がぱらっと口中でほどけ、独特のにおいが残るニンジンとあまからつゆで白いご飯がどんどんすすみます。

あとニンジンといったら、乱切りでカレーに入りシチューに入り、いちょうで豚汁やけんちん汁に入った。「うえー」と、それらにワタシら子どもはいちいち反応したもンでした。

しかしこの個性的なニオイのお蔭でニンジンは野菜界の頂点に君臨したとも言えます。

♪きらいな~のあ~かいニンジン・・の「ニッキニャッキ」や、♪いっぽんでもニンジン・・、田原トシちゃんの「ニンジン娘」等々、歌に歌われるまでになった。

調べてみたらほかに、「キャロットスープの歌」(谷山浩子・1988年)、「にんじんとグリグリ」(林原めぐみ・1989年)が、ありました。「にんじんとグリグリ」の作曲はタケカワユキヒデです。

にんじんが登場する歌はこれ以降はありません。ほぼ昭和の時代で終焉(えん)しているんですね。これはいったいどうしたわけか。

「ウィキペディア」によると、ニンジンは品種改良により、かつてのような強いニオイはなくなったそうです。

そこに、理由があるんじゃないでしょうか。すなわち、子どもが嫌う野菜の筆頭だったからこそ印象に残りやすく、歌詞に採用された。

あと、オリーブオイルの台所への浸透も挙げてみたいです。

キャロット・ラぺとフランス語で呼ばれたりするニンジン千切りサラダをはじめおかずの幅が広がり、よりおいしく食べられるようになった。

千切りをツナ缶と和えた沖縄の「にんじんしりしり」など、子どもが好む新境地はどんどん広がっています。

あとそうそう、にんじんみたいな赤毛の男の子が主人公の19世紀フランス文学ルナール著『にんじん』といったら世界児童文学全集に必ず入っていたものですが、最近はどうなんでしょうネ。


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夕暮れにパチリ。

前菜は、カボチャのスープ、さいの目エマンタールチーズととまとのサラダ(すべて残り物)
主菜は、牛肉とニンジンの赤ワイン煮、七面鳥腿肉ロースト、ミニマカロニ、レンズ豆煮込み(すべて残り物)



立ち呑み日記・胡椒ガリガリ [主菜]

「胡椒ちょうだい」
と、お昼に、いまひとつ味の薄いペスト風味のスパゲッティーにたーっぷりガリガリやる12歳のムスメ。

干支がひと回りするまでになると、大人っぽい味も好むようになるものですネ。

「辛くないの?」
と、聞いたら肩をすくめ、
「別に。いいにおい」

みなさん胡椒はお使いになるほうですか?

「エエもう何にでも」
という方が、胡椒に限ってはおられるような気が、します。

昭和40年代ころは食卓にソースやしょうゆ、それに味の素が出ていて、箸をつける前からびゃーっと蛇行させてかけたものですが。

今、この習慣は廃れたのではないでしょうか。が、胡椒だけは世紀をまたいで生き延びた。ホラ、ラーメン食べる時。かける派は、手がもう条件反射に胡椒をつかんでパッパッパッ・・

味見もせずいきなりパッパッは料理人に失礼千万ッ、
と、この件インターネットの掲示板の格好の話題らしく、かけない派は目を剥き、かける派はそれに応酬しています。

いわく、ラーメン屋の卓に出ているということは「お好みで」ということなんだから遠慮なくパッパパッパやっていいのだッ。

論争および社会を見回すと、かける派に一票投じたい気が、しないでもないです。なぜというに、サッポロ一番しょうゆ味には胡椒の小袋がついてくる。

どうです、大手即席ラーメン会社のお墨付きですぞ。

この小袋を、かけたい人は破って最後にパッパッとやり、そうでない人は外側の袋とともに捨てる。あるいはもったいないので引き出しにしまっておく(でもたいがい使われることなくたまるいっぽう)。

JSTV(欧州向け日本語衛星放送)で放映されるNHK「あさイチ」の夢の三大シェフ競演のコーナーで、イタリアンの落合シェフがあるときパスタに胡椒を大いにガリガリなさったのも、肩を持ちたくなる要因です。

何味のソースだったかちゃんと味つけし、一人前のお皿へ盛り付けたところへ、ガリガリガリガリガリもひとつガリガリガリガリ・・

「ぼくは胡椒大ッ好きだからたーっぷりね」

ヘーエそれいいんダと思いましたね。それこそ味見もしないでいきなりではないですか。料理人に失礼千万どころか大シェフが率先してやっておられる。

一票を投じておきながらあれですけど、ワタシ自身は普段はかけない派です。だってかけちゃうとどれもこれもみーんな胡椒の風味になる。

胡椒の風味でいきたいナ、と、いう時に、局部的にかける方針を貫いております。

たとえば、うちはフランスご飯なので鶏ローストがしょっちゅう食卓にのぼるんですが、フランス人はマスタードで食べるのを好みますが、そうでなく塩パラッと胡椒ガリガリ、これがなかなかヨロシイんですヨ。

全体にでなく、ひと口に切ったところへパラッガリガリ、また別のひと口は粒マスタード、と、いうふうに、今後ともやっていきたい所存であります。

あとそうそう、胡椒のガリガリの、ペッパーミルっていうあれですね、あれってフランス車の「プジョー」が生産してるんですってネ。19世紀から製造販売をはじめ、その後に自動車製造に乗り出したんだそうです。

知りませんでした。


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日曜の夜はひっそり。「サザエさん」のおしまいの歌みたいなのが、フランス人の耳にも聞こえてるんでしょうネ。

前菜は、トマトと千切りニンジンと薄切りセロリのサラダ
主菜は、牛ステーキ、じゃがいもピューレ、いんげん塩茹で